IMSS

物構研News No.18

No.18 2016年8月発行

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Contents

  • 分子進化論
  • 「最先端×使いやすさ」を実現
  • 施設情報
  • S1エリアの分光器「アルテミス」のアップグレード
  • 結晶化システムの更新
  • 研究トピックス
  • 光センサータンパク質の構造を解明
  • 充放電中におこる電池内部の構造変化を解析
  • 太陽光による水分解を高効率化するナノコンポジット結晶を開発
  • 金属強磁性体SrRuO3のスピン波の測定に成功
  • お知らせ
  • 9/4(日)KEK一般公開
  • 11/22(火)~26(土)中性子・ミュオンスクール

分子進化論

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地球に初めて生命が誕生したのは約38億年前。どんな姿形をしていたのだろうか。そこからどのように進化し、現在のように多様な生物界を作り上げてきたのだろうか。直接見ることのできない進化の様子を、DNAを読む仕組みから解明する研究が行われている。

......続く( KEKハイライト)

「最先端×使いやすさ」を実現

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物質の構造は機能とリンクする。従って物質の構造を分子レベル、原子レベルで正確に理解すること、そして分子同士や分子集団間の相互作用を階層を追って理解していくことが重要である。
その中で分子全体の周期構造を観る「X線小角散乱」という手法がここ数年、活気を帯びてきている。


施設情報

ミュオン S1エリアの分光器「アルテミス」のアップグレード

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J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)の低速ミュオンビームライン(S1実験エリア、Surface Muon Beamline)にインストールされた分光器のアップグレードが行われ、計数率耐性が6倍に向上した。
分光器の検出器(Kalliope)からデータ収集系は、KEK物構研・素核研・計算科学センターの共同開発であり、この検出素子のアナログ信号をデジタル信号に変換する専用IC(ASIC)をアップグレードした。従来のASICでは、一つの信号を受けてから300ns程度の検出器不感時間(τ)があり、ビームの強度を十分に受けきれていなかった。またアナログ波形歪みのため、計数率補正をかけても測定スペクトルに歪みが残っていた。
これに対し、新しいASIC(ポールゼロキャンセル回路型Volume2014)では不感時間がτ=50nsに短くなり、計数率補正後の歪みもなくなっている(下図右の赤点)。このアップグレードにより、S1分光器は当初計画した性能が出たため、ARTEMIS(Advanced Research Targeted Experimental Muon Instrument at S-line:アルテミス)と名付けられた。

結晶化システムの更新

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構造生物実験準備棟にて2003年より稼働してきたタンパク質の結晶化システムの分注機と結晶育成の経過を観察する観察装置が撤去された。
タンパク質の立体構造を得るには、試料として目的のタンパク質を結晶にする必要がある。タンパク質の結晶化については未だに普遍的な手法は無く、pHや溶剤など条件を変えて結晶化条件を探している。結晶構造解析では、結晶化が一つのボトルネックとなり、この過程だけで何年も費やすこともある。このような背景から、構造生物学研究センターでは、結晶化を効率化・支援するためのシステムを開発・運用してきた。
タンパク結晶条件探索・育成のためのドロップを、従来は0.2~0.5μ?ずつ滴下する分注システムを利用してきた。いくつかのマイナーチェンジを経て、創薬支援技術基盤プラットフォーム(PDIS)により、0.05~0.1μ?ずつという微量分注に対応した分注器を増設、また高解像度でUV等を用いた観察装置も増設された。これまで従来の分注機と観察装置をそれぞれ新型のと併用してきたが、この夏、従来の分注機と観察装置を撤去し、新しい分注機と観察装置に完全移行となった。


研究トピックス

光センサータンパク質の構造を解明

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神経軸索の光による形態制御

横浜市立大学の朴 三用教授、KEK物質構造科学研究所の足立伸一教授らのグループは、光センサータンパク質の一種である光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC)の構造・機能を原子レベルで解明した。  PACは光を感知すると情報伝達物質cAMPを生産する事が知られている。この性質を利用して、マウス海馬の神経細胞において、光操作によってcAMP生産を操作、軸索の分岐・伸長の誘導に成功した。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

充放電中におこる電池内部の構造変化を解析

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実用蓄電池オペランド測定用中性子回折計(BL09:特殊環境中性子回折計、SPICA)の外観図(A)および、実験の概要図(B)。測定は、非破壊のまま18650型円筒リチウムイオン電池(C、その拡大図D)をSPICAの中心に設置し、充放電反応を進行させたまま、パルス中性子を照射し電池反応をリアルタイムに観測する。

 東京工業大学、KEK物質構造科学研究所、京都大学の研究グループは、実際に充放電しているリチウムイオン電池の内部で起こる不均一かつ非平衡状態で進行する材料の複雑な構造変化を原子レベルで解析することに成功した。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

太陽光による水分解を高効率化するナノコンポジット結晶を開発

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ナノコンポジット光電極の模式図とIr金属が自己組織化したナノ柱状結晶が埋め込まれたIr:SrTiO3半導体薄膜の断面STEM像

東京大学物性研究所は、名古屋大学、KEK物質構造科学研究所、東京理科大学とともに、直径5nm、長さ20nmの金属ナノ柱状構造が酸化物の中に埋め込まれた「ナノコンポジット結晶」を簡便に作製するプロセスを開発した。このナノコンポジット構造に太陽光を照射し、水を分解させると、水分解光電極反応の効率が著しく向上することを見出した。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

金属強磁性体SrRuO3のスピン波の測定に成功

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HRCの中性子ブリルアン散乱実験で測定したSrRuO3のスピン波のエネルギーの温度変化(a)とSrRuO3のホール伝導度の測定値(b)

KEK物質構造科学研究所の伊藤晋一教授のグループは、理化学研究所創発物性科学研究センター、ソウル大学のグループと共同で、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)に設置された高分解能チョッパー分光器(HRC)を用いて、次世代型太陽電池への応用などが期待される金属強磁性体SrRuO3のスピン波の測定に成功した。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)


お知らせ

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9/4(日) KEK一般公開

KEKのつくばキャンパスを公開。普段は見ることのできない実験施設を見学、講演や体験イベントなど科学技術に直接触れることができます。

KEK一般公開2016 一般公開PF特設サイト
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11/22(火)~26(土)中性子・ミュオンスクール

中性子、ミュオンを用いた実験に興味を持ちながらまだ足を踏み入れていない若手研究者を対象に、中性子、ミュオンを用いた物性実験に関する講義、演習を行う短期スクールです。
※参加申込 9/15まで
中性子・ミュオンスクールHP