No.20 2017年2月発行
世界の人口は増え続け、今や70憶人を超えている。この人口増加を支えているのが、悪臭として知られるアンモニア(NH3)である。農作物など植物の生育には窒素(N)が必須で、その供給源としてアンモニアが使われている。アンモニアの安定供給無くして、農作物の安定供給、そして今の人口は存在し得ないと言っても良い。
その一方で、アンモニア合成には高温・高圧を必要とし、エネルギーを大量に消費していることも事実である。
......続く( KEKハイライト)
物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点の辻本吉廣主任研究員、広島大学、高輝度光科学研究センター、日本大学の共同研究グループは、合成が困難であったコバルト酸フッ化物を材料設計および高圧合成法によって作製することにより、圧力でコバルトの高スピン状態が低スピン状態へ転移するスピンクロスオーバー現象を観測した。さらに、この現象が結合の強い固体でありながら、コバルトイオンとフッ素イオンの間に新しい結合の形成を伴う新規な機構で発現することを明らかにした。
>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)
KEK 物構研の柳下明 名誉教授、東京大学、立命館大学、千葉大学、京都大学、量子科学技術研究開発機構(QST)、理化学研究所、及び高輝度光科学研究センター(JASRI) の共同研グループは、X線自由電子レーザー(XFEL) 施設「SACLA」を用いたフェムト秒 X線光電子回折法 により、赤外パルス強レーザー電場中のヨウ素分子の構造の決定に成功した。
>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)
東京大学大学院の藤田大士特任研究員と藤田誠教授、およびその共同研究チームは、4 価のゴールドバーグ多面体構造を有する物質群の存在を発見した。3 価のゴールドバーグ多面体は報告されていたが、4 価のゴールドバーグ多面体が分子構造として「意味」を持つ事が明らかになったのは今回が世界で初めて。
>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)
KEK 物構研の小林賢介特任助教、熊井玲児教授、村上洋一教授らは、東京工業大学、日本大学と共同で、鉄系超伝導体の圧力下における超伝導転移温度(Tc) と結晶構造の関係を放射光 X 線を用いて明らかにした。その結果、鉄系超伝導体で広く知られてきたTc 上昇則に反し、歪みの大きい構造でありながら高い Tc を示すことを発見した。
>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)
東京電機大学の藪内直明准教授らの研究グループは、リチウムイオン電池用電極材料として酸素の酸化還元を充放電反応に用いる、汎用元素から構成された新規岩塩型酸 化物(図)の合成に成功した。
>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)
J-PARC の物質・生命科学実験施設(MLF)のBL23 では、POLANO(偏極中性子散乱装置)の建設がほぼ終了し、コミッショニングが始まろうとしている。POLANO とは中性子のスピン偏極を利用し、非弾性散乱を測定する分光器である。
現在、偏極実験の鍵となるスピン偏極を偏極子として3Heスピンフィルターを、また検極子としてベンダーミラーを利用したアナライザーを使用する設計である。この手法だと、中性子エネルギーが40 meV 程度の比較的低いエネルギーまでの偏極実験しか実現しない。POLANO では将来、より広い測定領域を目指すために陽子スピンフィルターの開発に着手している。
陽子スピンフィルターは、常磁性電子を混入した水素を多く含む物質に、強磁場極低温でマイクロ波を照射することで実現する偏極子である。この時、物質内では電子スピンの偏極度が陽子スピンに移行し、陽子スピンの偏極度を電子スピンと同程度まで高めることができる。この原理(動的核偏極)の基礎実験を行った。
今回はポリエチレンフィルムにTEMPO(C9H18NO)を混入した試料に5T、1K でマイクロ波を照射した。その結果、陽子偏極度が40% 程度まで向上したことを確認した( 図) 。
MLF の高強度中性子全散乱装置NOVA、水素貯蔵基盤研究グループでは、実験中に測定データをモニターするシステムとして、分散メッセージングによるオンラインモニターを開発、2016 年11 月のビーム再開に合わせて導入し、MLF の中性子ビームを用いたコミッショニングを開始した。
分散メッセージングとは識別子とデータから構成される単純なデータ構造を計算機メモリ上で取り扱うソフトウェアを用いて、複数のプロセス間で処理を連携、分担すること。デー タを保存/ 取り出すプロセスが互いに独立しているため、互いのプロセスを阻害する可能性は非常に低く、処理負荷の異なるプロセスが共存する環境に強い。
現在は検出器で生成したデータのみを取り扱うシステムであるが、Queue サーバーには試料環境装置から出力された温度データ等の保存も可能なため、検出器データと装置データの相関をオンライン的に示すことも容易である。
開発したオンラインモニターはプロトタイプであり、今後、MLF 計算環境グループと連携し、さらに高度化されていく予定。同グループは、将来的には構造因子S (Q )、二体分布関数 g (r ) を実験中に導出するオンライン構造解析システムの実現を目指している。
女子高校生に科学に興味を抱いてもらえるよう、科学実験、分野の第一線で活躍する女性研究者による講義、大型実験施設での研究者とのコミュニケーションを交えた施設見学、女子大学院生との懇談会などのプログラム
詳しくは、理系女子キャンプムHP
期間中、KEK コミュニケーションプラザ(常設展示)の公開、22(土)にはB ファクトリー実験施設・フォトンファクトリーにて実験施設見学ツアーを行います。
2017 年3 月14 日(火)-15 日(水)に、つくば国際会議場(エポカルつくば)にて量子ビームサイエンスフェスタをPF シンポジウム、MLF シンポジウムと合同で開催します。
詳しくは、量子ビームサイエンスフェスタHP