No.32 2021年3月発行
物構研の4種の量子ビームの一つ 低速陽電子の実験施設Slow Positron Facility 略称SPFは、KEKつくばキャンパスの南西角、線形加速器の入射器棟にある。
2020年夏に10年ぶりのターゲット部(低速陽電子生成ユニット)更新作業が行われた。結果、世界最強クラスの低速陽電子ビームを提供し続けているSPFのビーム強度は最大で108個/秒の大台に乗った。
SPFスタッフと多くの協力者によるターゲット部更新作業と、SPFユーザーの声をご紹介する。
物構研ハイライト 2021/03/16 低速陽電子実験施設のターゲット部更新
フォトンファクトリー(PF)のビームラインでは、かつて、立ち入りや装置の操作などに多くの鍵が必要とされていました。人と装置の安全確保のため、その鍵が使われているときはこの鍵は貸し出さないなどのルールがあり、要請に応じて人が判断し鍵を開けに行くことも少なくありませんでした。PFとフォトンファクトリー アドバンストリング(PF-AR)は少し離れた場所にあります。足を運ばなくても適切な人に適切な鍵を渡すことができないかと、2002年小菅 隆 先任技師が中心となりPF-ARの鍵管理ロボットが開発されました。メッセージ配信システムSTARS*を活用した鍵ロボットは、既成の鍵管理システムにはない管理能力を持ち、かつ低コストでした。
ロボットは北西棟玄関横でひたすら鍵貸し出しに務めてきましたが、残念ながら老朽化には勝てず動かなくなりました。この間に、PF・PF-ARのビームラインでは鍵がほとんど要らない新しい制御システムが稼働しており、ロボットは引退することが決まりました。
今後は、最低限必要な鍵を新しいシステムで管理することになり、準備が進められています。
*STARS(Simple Transmission and Retrieval System):
小菅氏らによって開発されたビームラインの制御システム。他機関の実験施設などでも活用されている。
物構研トピックス 2011/03/08 小菅隆技師、KEK技術賞を受賞
KEKでは加速器科学への興味を持ってもらうことを目的に大学3年生以上を対象とした「加速器科学インターンシップ」を実施しています。
J-PARC MLFのミュオン科学研究施設(MUSE)では、2018年からこの制度を活用して学生を受け入れています。
今年は名古屋大学の高エネルギー素粒子物理学研究室の学部4年生4名がミュオンビームラインD1を訪れ、自ら考案し自作した検出器で実験を行いました。ミュオンの崩壊で生じる陽電子の位相空間分布を表すパラメータを測定し、解析結果はそれぞれの卒業論文にまとめられました。
名古屋大学高エネルギー素粒子物理学研究室(N研)ニュース 2021/02/15 学部4年生がJ-PARCの物質・生命科学実験施設にて卒業研究を行いました