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物構研News No.5

No.5 2013年5月発行

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Contents


燃料電池自動車のカギ、水素貯蔵のしくみ

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私たちの社会が抱えているエネルギー問題。地球温暖化と化石燃料の枯渇の点からも、新たなエネルギー源の普及が求められている。水素はその新たなエネルギー源の一つとして注目されている物質で、国内外で盛んに研究が進められている。

、水素は酸素と反応して水になると、エネルギーが発生する。このエネルギーを自動車のモーターに利用したものが燃料電池自動車。燃料電池自動車は化石燃料を使わず、温暖化ガスも排出しないので、ガソリン車と置き代わることができれば、エネルギー問題や環境問題の解決する上で大きな効果をもたらすと期待されている。

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フォトンファクトリーの春休み

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今年は桜が例年より2 週間も早く咲きはじめ、ちょうど春休みの頃にお花見をした方も多かったのではないでしょうか。桜の季節が終わって、間もなくゴールデンウィークが始まる時期ですが、少し時を巻き戻して、春休みを振り返ってみたいと思います。フォトンファクトリーは、どのような春休みを過ごしたのでしょうか。

フォトンファクトリーは、2 月25 日、月曜日の朝に平成24 年度の運転が終了した。4 月始めに運転が再開されるまでの1 ヶ月ちょっとの間、今年は特に忙しい春休みだったようだ。25 日の朝、加速器の運転が止まるとすぐ、ビームラインBL-15 では物品の移動作業が始まった。

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研究トピックス

[理論] 分子性固体中の光誘起相転移を扱う新しい理論的枠組み

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理論的に求められた(EDO-TTF)2PF6の光変化の様子

KEK 物構研の岩野薫研究機関講師と産業技術総合研究所ナノシステム研究部門の下位幸弘上級主任研究員の研究グループは、 分子性固体の光誘起相転移を理論的に扱うための新しい手法「自己無撞着環境場法」を提唱した。そして本手法により、光によって絶縁体から金属状態へ変化する分子性固体(EDOTTF)2PF6 の光誘起相転移メカニズムを理論的に解明した。

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[材料・物性] 光で作られた隠れた準安定相の発見

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プルシャンブルー類似体の模式図。シアノ基(棒)に架橋された遷移金属(小さな球)がホスト格子を形成する。このホスト格子の空隙をゲストであるアルカリ金属イオン(大きな球)が占有する。

筑波大学の守友浩教授グループは、KEK 物構研の足立伸一教授との共同研究により、熱相転移を示さないコバルトプルシャンブルー類似体をフェムト秒レーザーで光励起したところ、大きなスピンをもつCo2+ の寿命が32 ナノ秒と極端に長いことを見出した。このような長寿命は、新しい磁気状態( 準安定状態) の形成を強く示唆する。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)

[技術] 次世代光源用光陰極直流電子銃から500 keV大電流ビーム生成に成功

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500 kV 光陰極直流電子銃

日本原子力研究開発機構の西森信行研究副主幹、KEK加速器研究施設の山本 将博助教、広島大学の栗木雅夫教授及び名古屋大学の桑原真人助教らの共同研究グループは、世界に先駆けて500 keV の大電流ビームを生成できる光陰極直流電子銃を開発した。これは、放射性核種の非破壊分析を可能にする大強度γ線源や、生体細胞の高分解能イメージング、持続可能な社会実現のための光合成や触媒の研究における新たなツールとしての高輝度・短パルスX 線源など、次世代光源へとつながる技術である。

>>詳しくはこちら(KEKプレスリリース)


施設情報

cERL 入射部のビーム調整を開始

ERL 開発棟で建設中のcERL は、500 kV 光陰極DC 電子銃、入射器超伝導空洞、入射器診断ラインなどの設置と調整が完了し、3 月末にcERL 入射部の建設が完了した。
放射線申請および放射線主任者検査を経て、4 月22 日からcERL 入射部の調整運転が開始された。光陰極DC 電子銃から出力された約390 keV の電子ビームを、超伝導空洞で約5MeV まで加速でき、施設検査に向けたビーム調整が順調に進んでいる。

中性子ビームラインBL23 偏極中性子散乱装置POLANO の製作開始

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ビームラインに設置されるコンクリートブロック製缶 を組み上げた様子

KEK 物構研と東北大学金属材料研究所は共同でJ-PARC の物質・生命科学実験施設(MLF)のBL23 に偏極中性子散乱装置POLANO の建設計画を進めている。
この装置は中性子が「ミクロな磁石」として振る舞うことを利用し、磁性体中におけるスピンダイナミクスの測定を行うための装置である。
これまで装置の設計、および遮蔽体等の製作をすすめてきたが、平成25 年度より本格的な建設が始まる予定である。

>>詳しくはこちら(中性子科学研究系 月例研究報告 3月)

ミュオン U ライン 大強度パルスレーザー 試験運転開始

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J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF) に建設中の超低速ミュオンビームライン(U ライン)に、大強度パルスレーザーシステムが設置された。
超低速ミュオンは、加速器からの低速ミュオンをタングステン標的に入射し、超高真空中に蒸発してきたミュオニウム( 電子1 個と正ミュオン の水素状原子) にレーザーを照射、電子を引き剥がすことで得られる。
今回搬入された固体レーザーシステム基幹部は、新学術領域研究「超低速ミュオン顕微鏡」計画により、理化学研究所の大石裕協力研究員、宮崎洸治特別研究員、斎藤徳人基幹研究所研究員、和田智之ユニットリーダー、岩崎雅彦主任研究員らのグループが開発した。今後はレーザーの組み上げ・調整作業が行われる。
また並行して、KEK 物構研の中村惇平准技師、三宅康博教授らのグループでは、レーザーシステムを格納するクリーンルーム等を整備している。今後は、真空紫外光の輸送・診断系やレーザー安全インターロック系など施設との連結部の調整が行われ、超低速ミュオン取り出しを目指している。


イベント予定

6/29(土) 13:30 - 16:00 
KEK 公開講座 「量子ビームで拓く惑星・地球科学」

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加速器が生み出すビームを利用して、地球や惑星内部の物質や、小惑星探査機はやぶさによって回収されたイトカワの微粒子を調べて分かった惑星・地球科学の講演会。
鍵 裕之 教授(東京大学)
「中性子と放射光を利用して地球や惑星の中身を調べる」
中村 智樹 教授(東北大学)
「放射光で明らかにする太陽系天体の誕生のプロセス」

>>詳しくはこちら

8/16(金)-24(土)
第7回サマーチャレンジ

研究最前線で活躍する研究者と共に実験や解析、最終日には全員が研究成果を発表する、研究を 9 日間にわたって体験するプログラム。(申込終了しました)
>>詳しくはこちら

8/25(金)- 30(土)
アジア サイエンスキャンプ2013

ノーベル賞学者や世界のトップレベルの研究者による講演、講演者がリードするディスカッションセッションなどにより、アジアからの参加生徒が直接科学の面白さを体験し、また参加者同士の交流を深めるプログラム。(申込終了しました)

>>詳しくはこちら


お知らせ

次世代放射光源ERL の愛称、PEARL に決定

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KEK が次世代放射光源として推進しているエネルギー回収型ライナック(ERL) の愛称がパール(PEARL, Photon Factory ERL Advanced Research Laboratory)に決定しました。

物構研広報 新体制

今年度より物構研広報室が新設されました。

  • 室長:宇佐美 徳子(放射光科学研究系)
  • 室員:餅田 円、大島 寛子
  • 広報委員:山田 和芳(委員長)、足立 伸一・岩野 薫・阿部 仁(放射光科学研究系)、山田 悟史・瀬谷 智洋(中性子科学研究系)、小嶋 健児(ミュオン科学研究系)