目的から探す~試料別~
お手持ちの試料について、どんなことが調べられるか、代表的な試料の測定事例と手法を紹介します。
固体試料全般
固体(バルク)の原子構造を知りたい
X線の回折効果を利用し、散乱パターンの解析を通して固体の電子、原子構造を決定します。 X線回折(XRD)
電子材料
原子価数を知りたい
内殻状態に関わる遷移のエネルギーに着目し、その内殻状態の所属する原子の価数を決定できます。
X線内殻光電子分光(XPS)占有状態を知りたい
価電子状態の様子を、10 eV程度のスケールでおおまかに、あるいはフェルミエネルギー付近に限定して微細に調べられます。 光電子分光(PES)
フェルミ面を知りたい
非占有状態を知りたい
内殻状態から非占有状態、特に伝導帯への遷移を使って,非占有状態の主成分の電子軌道の特定やエネルギー、バンド幅などを調べられます。 X線吸収(XAS)
励起状態を知りたい
X線を吸収した後に放出されるX線のエネルギーを調べて、物質中の数eVから数100 eV程度までの励起状態の性質を調べます。
X線発光(X線非弾性散乱)超伝導磁場侵入長を知りたい
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超伝導体に磁場をかけると、超伝導凝集量で決まる磁場侵入長程度しか磁場が侵入せず、特に第2種超伝導体では磁束構造が出来ます。ミュオンスピン緩和を使って磁束構造から生じる磁場分布を測定することによって、第2種超伝導体の磁場侵入長を測定出来ます。
ミュオンスピン緩和(μSR)磁性材料
強磁性体のスピンモーメント、軌道モーメントの大きさを知りたい
右/左回りの異なった円偏光に対するX線吸収の差から、強磁性体のスピン角運動量、軌道角運動量を決定します。
X線磁気円二色性測定(XMCD)界面/表面における磁気分布を深さ分解で知りたい
斜入射させたX線の伝搬経路の角度依存性を利用して、深さ分解でXMCDを求め、ひいては、界面、表面におけるスピン、軌道角運動量の深さ依存性を求めます。
深さ分解XMCD磁気構造を原子レベルで知りたい
波としての中性子と性質を利用して、磁気回折パターンから物質の磁気モーメントの配置構造を調べられます。
中性子回折(SuperHRPD)磁気励起を知りたい
1 eV以下の低エネルギーの主として磁気励起のエネルギー、運動量依存性を決定できます。
中性子非弾性散乱(HRC)内部磁場の大きさや揺らぎを実時間で見たい
1ナノ秒から数十ミリ秒の時間領域のスピン揺らぎ、空間的に乱れた磁気的状態を観測できます。
μSR電池材料
正極材料、固体電解質内部の結晶構造やリチウムの分布を調べたい
化学的環境(二体相関等)と物性との関係を調べたい
物質(材料)内を動くリチウムイオンのダイナミクス、イオン拡散係数を知りたい
物質(材料)中のバルク、界面でのリチウムの運動を捉えられます。
μSR電極と電解液(質)の固液界面、固固界面を調べたい
重元素中の軽元素についての定量的な測定、原子番号の近い元素を区別して見たい。
中性子反射率測定(SOFIA)負極材料のアモルファス構造・ナノ構造を調べたい
物質(材料)中の局所構造を捉えられます。
中性子全散乱(NOVA)触媒
特定の元素の周りの局所構造を知りたい
ソフトマター
ナノ~サブマイクロメートルの構造を見たい
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高分子の結晶化や両親媒性分子の自己組織化構造等を、秒オーダーでの経時変化、局所構造を観察できます。また放射光の斜入射により、薄膜の3次元構造をナノ~サブマイクロメートルスケールで観察できます。
X線(斜入射)小角散乱薄膜試料の表面・界面のナノ構造を見たい
生物試料
タンパク質の立体構造を知りたい
タンパク質の溶液構造を知りたい
溶液中のタンパク質の静的構造解析や階層性を調べられます。
X線小角散乱生体中の微量元素の分布や化学形を知りたい
病理標本・組織等のイメージングを行ないたい
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X線の位相を利用したイメージングにより、これまでに描出できなかった軟組織のイメージングが可能。また、高エネルギーの単色X線を利用し、血管系などを従来法より鮮明に描出できます。
X線イメージング細胞中の特定の部位や特定の分子を狙ってX線を照射したい
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ビームサイズ可変のマイクロビーム(最小5 μm)を、細胞の特定の部位に照射できます。またエネルギー可変のX線により、生体内の特定の元素を狙った照射ができます。
生物に対する放射線照射効果環境試料・考古学試料
非破壊で元素分析したい
その他
高圧力下の構造変化を見たい
ピコ秒オーダーで変化する構造や電子状態を見たい
X線結晶回折、X線溶液散乱、X線吸収微細構造測定など様々な放射光X線測定法に対して、ピコ秒時間分解測定が可能です。 またレーザー光との組み合わせによる光誘起励起など、外部刺激による構造や電子状態の変化を時々刻々と捉えることが可能です。
ピコ秒時間分解X線測定 時分割XAFS固体表面の構造を知りたい
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低速陽電子の回折実験、特に固体最表面の原子構造を決定できます。 全反射高速陽電子回折(TRHEPD)
固体中の水素の状態を知りたい
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固体中に不純物として含まれる水素の位置や、その電子状態を調べられます。 ミュオンスピン緩和(μSR)