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物構研News No.23

No.23 2018年2月発行

Contents

  • 高効率人工光合成への挑戦
  • 太陽光を無駄なく利用して人工光合成を
  • 研究者がわくわくするような材料を創りたい
  • 最近の研究成果から
  • タンパク質構造の非対称性と遺伝子制御システムの複雑性~生物の分子の進化には、対称性の崩れが必要だった~ 2017/12/27
  • 貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発~新しい窒素分子の活性化機構を示唆~ 2018/1/22
  • 機械学習により実験計画の自動決定が可能に~「学習」と「予測」でX線スペクトル測定の高効率化に成功~ 2018/1/22
  • イベント報告
  • 12/27 物質構造科学研究所 設立20周年記念シンポジウム「物質構造科学の過去・現在・未来」を開催
  • 1/8~1/10 つくばにて第31回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム 開催
  • 1/8 日本放射光学会 市民公開講座「放射光で輝く!女性研究者」開催
  • お知らせ
  • 外務省広報用映像にフォトンファクトリーの 北村 未歩さんが出演
  • 受賞
  • ミュオン科学研究系の 中村 惇平氏 平成29年度KEK技術賞を受賞
  • ミュオン科学研究系の 小嶋 健児氏 高エネルギー加速器科学研究奨励会 小柴賞を受賞

高効率人工光合成への挑戦

緑の髪を持ち、光合成ができる少女が登場するSF小説があった。人が光合成するなんて、夢のようなお話だと思った。 いまや人工光合成の研究は盛んに行われている。葉緑素のように可視光でも光合成ができる材料を開発している研究グループについてご紹介する。


最近の研究成果から

タンパク質構造の非対称性と遺伝子制御システムの複雑性~生物の分子の進化には、対称性の崩れが必要だった~ 2017/12/27

分子進化のモデル図

DNAに書き込まれている遺伝情報が読み出される最初の反応を転写といいます。転写開始に必須で全遺伝子の9割の発現を制御する転写開始因子TBPは、バクテリアにはなく真核細胞と古細菌に存在します。真核細胞のシステムが進化の過程でどのように複雑化したかは、いかに遺伝情報の読み出しシステムの複雑性を獲得したかにかかっていると考えられます。

物構研 構造生物学研究センターの千田 俊哉 教授・安達 成彦 特別助教は、東京大学 分子細胞生物学研究所、理化学研究所と共同で、進化の過程で形成されたタンパク質構造の非対称性を、独自に開発した分子進化の指標などによって定量しました。その結果、真核細胞TBPは甚だしく非対称な立体構造を持つため、相互作用因子を増やせたこと、さらにそれが真核細胞の複雑化につながったであろうことを明らかにしました。

物構研トピックス:タンパク質構造の非対称性と遺伝子制御システムの複雑性~東大 分生研・物構研・理研の研究グループが「分子進化論」続編にあたる論文を発表~

貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発~新しい窒素分子の活性化機構を示唆~ 2018/1/22

反応機構イメージ図

東京工業大学の 細野 秀雄 教授を中心とする研究グループは、KEK 物構研と共同で、貴金属を使わない高性能のアンモニア合成触媒 LaCoSi を開発しました。LaCoSi は、ランタン La とコバルト Co の金属間化合物です。CoはルテニウムRuに次ぐ活性を持つことが知られていましたが、LaCoSi はこれまで報告されてきたCo系触媒でアンモニア合成において最高の活性を示します。

この共同研究には、PFの阿部 仁 准教授と、丹羽 尉博 技師が参加し、X線吸収分光法(XAFS)実験により、LaCoSi 内での La から Co への電子の受け渡しが確認されました。この電子の授受が新触媒の活性が高い理由と考えられています。

プレスリリース:貴金属を使わない高性能アンモニア合成触媒を開発 ~新しい窒素分子の活性化機構を示唆~

機械学習により実験計画の自動決定が可能に~「学習」と「予測」でX線スペクトル測定の高効率化に成功~ 2018/1/22

KEK 物構研の小野 寛太 准教授と量研(QST)の上野 哲朗 主任研究員を中心とする研究グループは、人工知能(AI)技術の一種である機械学習を用いて、X線スペクトル測定を高効率化する手法を開発しました。 この手法では、計測データの学習によってスペクトルを予測し、さらに次の計測データ点を自動的に決定します。これにより、従来の5分の1程度の測定時間で、これまでと同等の精度で物理量を決定することが可能になりました。

本手法は様々なスペクトル測定に応用することが可能であり、実験時間の短縮と実験コストの削減により物質・材料研究の加速化に貢献します。

プレスリリース:機械学習により実験計画の自動決定が可能に ~「学習」と「予測」でX線スペクトル測定の高効率化に成功~


イベント報告

物質構造科学研究所 設立20周年記念シンポジウム「物質構造科学の過去・現在・未来」を開催

2017年12月27日、KEK つくばキャンパス 研究本館 小林ホールにて、物構研設立20周年記念シンポジウムが開催され、東海キャンパスでのテレビ会議を通じた参加者も含め、149名が参加しました。

山田 和芳 物構研所長の挨拶、野村 昌治 KEK理事の講演に続いて、19名の物構研に関わるKEK内外の中堅・若手研究者が講演を行いました。物構研の4つのプローブ(放射光・中性子・ミュオン・陽電子)に関し、利用研究の展望や将来の施設運営について、 さらには加速器の将来展望についての熱弁が続き、会場からは各講演に対し質問の手が挙がりました。

最後に、物構研 次期所長である分子科学研究所 小杉 信博 教授が登壇、物構研の未来について語りました。

物構研トピックス:物質構造科学研究所 設立20周年記念シンポジウム「物質構造科学の過去・現在・未来」を開催

つくばにて第31回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム 開催

今年設立30年の「而立」を迎えた日本放射光学会は、1月8日~10日 つくば国際会議場にて、第31回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウムを開催しました。 地元つくばでの開催ということで、本会の実行委員会には物構研PFの職員が多数参加しました。

今後10年、そしてその先に放射光学会がどのような役割を果たすべきかを考える特別企画講演 「日本放射光学会三十而立」が開催されました。

また、今回「放射光科学賞」が創設され、フォトンファクトリー・アドバンストリングPF-ARで世界初の真空封止アンジュレーターの開発に成功した北村 英男 氏が受賞しました。

物構研トピックス:つくばにて第31回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム開催

日本放射光学会 市民公開講座 「放射光で輝く!女性研究者」開催

1月8日午後、放射光科学の分野で活躍する女性研究者を招き、市民に開かれた講座が開催されました。
唯 美津木 教授(名大)、南後 恵理子 研究員(理研)の講演に続き、癸生川 陽子 准教授(横国大)、永村 直佳 研究員(物材機構)、保倉 明子 教授(東京電機大)、村尾 玲子 主任研究員(新日鐵住金)らが、研究の魅力や放射光実験の様子、研究者生活などを交えたショートトークを行いました。会場からは「研究職を希望していますが、大学や研究所など、所属機関によってどんな違いがありますか?」「娘に勧められる職業でしょうか?」などの質問が寄せられ、研究者たちはそれぞれの立場や経験を踏まえて丁寧に答えていました。

物構研トピックス:日本放射光学会 市民公開講座「放射光で輝く!女性研究者」を開催


外務省広報用映像にフォトンファクトリーの 北村 未歩さんが出演

外務省が開催している国際女性会議 the World Assembly for Women (WAW!) の広報用映像に、物構研 放射光科学第一研究系の 北村 未歩さんが出演しています。
撮影は、つくばキャンパス4号館 およびフォトンファクトリーで行われました。インタビューでは、北村さんの研究テーマ「磁性を持たない酸化物同士の界面で生まれる強磁性」のほか、女性が働きやすい社会が話題になりました。北村さんは、自分が若い女性研究者の生き方のモデルの一つになれればと話していました。

物構研トピックス:外務省広報用映像にフォトンファクトリーの北村 未歩さんが出演


ミュオン科学研究系の 中村 惇平氏
平成29年度KEK技術賞を受賞

課題名「超低速ミュオン発生を実現させたコヒーレントライマンα光の輸送と強度測定技術」

物構研トピックス:中村 惇平氏がKEK技術賞を受賞

小山 篤 技術調整役/野村 昌治 KEK理事
中村 惇平 准技師/山田 和芳 物構研所長

ミュオン科学研究系の 小嶋 健児氏
高エネルギー加速器科学研究奨励会
小柴賞を受賞

研究題目「高集積陽電子検出器システムKalliopeの開発と実用化」


推薦者 門野 良典 教授/小嶋 健児 准教授