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物構研News No.26

No.26 2018年11月発行

Contents


国際単位系(SI)kg再定義の舞台裏

メートル条約の最高議決機関である国際度量衡総会(CGPM)は、2019年5月に国際単位系(SI)の4つの単位kg,mol,A,Kの再定義を予定している。 そのために日本が提出した高精度な定数値は、国家計量標準機関計量標準総合センター(NMIJ)の半世紀近い研究の成果だった。 日本の研究成果がSI基本単位の定義決定に直接関与するのは初めてのことだ。測定はNMIJだけでなく共同利用機関等も協力して進められ、物構研のフォトンファクトリー(PF)での実験データも最終データ算出に寄与した。


最近のプレスリリースから

負のミュオン素粒子で視る物質内部 ~世界最高計数速度の負ミュオンビームで長年の夢が実現~
2018/8/24 KEK、JAEA、J-PARC、大阪大学、国際基督教大学

豊田中央研究所、KEK 物構研、JAEA、大阪大学、国際基督教大学の共同研究グループは、J-PARC MLFの大強度ミュオンビームと高感度の高集積陽電子検出器システム(KALLIOPE)を組み合わせることで、世界で初めて、負ミュオンにより水素が物質内に作る微小磁場を検出しました。  多くのエネルギー材料・生体材料中では、水素を始め軽元素の運動が重要な役割を担っていることから、固体内の水素の運動を正確に検出できる新たな手法として期待されています。  この研究には、物構研 ミュオン科学研究系から、下村 浩一郎 教授、幸田 章宏 研究機関講師、竹下 聡史 特別助教、濱田 幸司 研究員(研究当時)が参加しました。

Nuclear Magnetic Field in Solids Detected with Negative-Muon Spin Rotation and Relaxation
Jun Sugiyama, Izumi Umegaki, Hiroshi Nozaki, Wataru Higemoto, Koji Hamada, Soshi Takeshita, Akihiro Koda, Koichiro Shimomura, Kazuhiko Ninomiya, and M. Kenya Kubo
Phys. Rev. Lett. 121, 087202, 2018
Editor's Suggestion & Featured in Physics

負ミュオンによるMgH2内の水素が作る微小磁場検出のイメージ図 (豊田中央研究所 杉山 純 氏 ご提供)

薬剤耐性の原因「薬剤汲み出しタンパク質」の排出メカニズムを解明 ~多剤排出トランスポーターMdfAの分子機構~
2018/10/1 KEK、京都大学、東京大学、岡山大学

集中治療室のような医療現場でも、私たちの身近に存在する耐性菌でも起こっている可能性がある「抗菌薬が効きにくくなってしまう現象」について、物構研 構造生物学研究センターの田辺 幹雄 特任准教授らの研究グループがしくみを解明しました。  薬剤耐性の原因の一つは「薬剤汲み出しタンパク質」とも呼べる多剤排出トランスポーターMdfAです。MdfAは外開きから内向き構造に変化することで、プロトンH+を取り込む代わりに細胞内から薬剤を排出することが分かりました。  この研究は、日本及びドイツの多機関の研究者が協力し、生化学実験・結晶構造解析・輸送活性実験・分子動力学シミュレーションなど多数の手法を組み合わせることで実を結びました。

Outward open conformation of a Major Facilitator Superfamily multidrug/H+ antiporter provides insights into switching mechanism
Kumar Nagarathinam, Yoshiko Nakada-Nakura, Christoph Parthier, Tohru Terada, Narinobu Juge, Frank Jaenecke, Kehong Liu, Yunhon Hotta, Takaaki Miyaji, Hiroshi Omote, So Iwata, Norimichi Nomura, Milton T. Stubbs & Mikio Tanabe
Nature Communications volume 9, Article number: 4005, 2018


VINROSEにて共鳴型スピンエコー観測に成功!

京都大学 複合原子力科学研究所の日野 正裕 准教授と小田 達郎 助教、物構研 中性子科学研究系 ソフトマターグループの遠藤 仁 准教授は、J-PARC MLF BL06において2種の中性子共鳴スピンエコー分光器の製作を進めている。このたび、その1つのNRSE型分光器で広い波長領域におけるエコー信号の観測に成功し、美しいグラフを描き出した。


イベント報告

名古屋にて大学共同利用機関シンポジウム 2018を開催

10月14日(日)、大学共同利用機関の日々の活動を広く一般の方々へお届けする「大学共同利用機関シンポジウム2018 ~最先端研究大集合~」が開催されました。例年秋に秋葉原での開催でしたが、今年は名古屋市科学館が会場です。
各機関の研究者によるトークイベントやブース展示があり、科学館を訪れた方や、各機関に興味のある方々など多数の参加がありました。

物構研 足立 伸一 副所長の講演のようす
光電子分光アナライザーを遊べる模型で紹介

KEK トピックス:「大学共同利用機関シンポジウム2018 ~最先端研究大集合~」に出展



お知らせ

2018年度量子ビームサイエンスフェスタ 第10回MLFシンポジウム/第36回PFシンポジウム

2019年3月12日(火)~13日(水)
つくば国際会議場(エポカルつくば)茨城県つくば市竹園2-20-3
3/12:量子ビームサイエンスフェスタ
3/13:MLF/PF各シンポジウムを並行開催