No.22 2017年12月発行
20世紀初頭まで自動車のタイヤは白かったことをご存じだろうか? 白いタイヤのクラシックカーを見たことがある方もいるかもしれないが、ほとんどの人が思い浮かべるタイヤの色はおそらく黒であろう。 では、普段目にするタイヤがなぜ黒いのか?その理由は充填剤(フィラー)にある。
修正情報:ゴム/フィラー界面のナノ構造 ◆AFMによる力学特性評価
「探針がゴムから離れていく様子を見ると、グラフ2と3では探針がゴムから瞬間的に離れるのに対し、 グラフ1では探針はゴムから瞬間的には離れず、引っ張り上げているのが分かる。」
と言う文に補足説明を加え、
「探針がゴムから離れていく様子を見ると、グラフ2と3では探針がゴムから瞬間的に離れるのに対し、 グラフ1では、グラフ2と3に比べて、ゴム層から探針が離れるまでの距離が長く、引っ張り続けているのが分かる。 (グラフ2と3で、座標0で垂直抗力が0にならないのは、カンチレバーと試料との凝着が原因で、シリコン基板のような硬い物質で測定しても距離の違いはあれ、グラフ2と3同様の形が観測される。)」
と変更しました。(2017/12/18)
産総研 物質計測標準研究部門・NIMS GREEN・東京学芸大・物構研 松下 正 名誉教授らの研究グループは、放射光を用いた「表面X線回折法」を従来比で約100倍高速化できる技術を開発しました。 様々な波長のX線を一度に照射できる集束X線を利用することで、電気化学反応中の固液界面構造の変化をリアルタイムに観察できます。 燃料電池などのエネルギー変換に伴う原子の動きを知ることで、反応機構の解明につながることが期待されます。
この研究には「固液界面の反応の直接測定」を目指していた物構研の元副所長 松下先生のアイデアが生かされています。 松下先生は、今年の春先までフォトンファクトリーにて精力的に研究活動を続けていましたが、論文掲載を待たずに7月7日にご逝去されました。心よりお悔み申し上げます。
ピロリ菌の慢性感染が胃粘膜病変に関わっていることはよく知られていますが、特にピロリ菌が作る病原因子CagAタンパク質が胃がん発症に関わっています。 近年の研究で、CagAは東アジア型と欧米型に大別され、日本を含む東アジア型の方ががんを発症しやすいことが分かっていました。 東京大学 医学系研究科と物構研 構造生物学研究センターの研究グループは、両者の構造を詳しく調べ、先端のかたちのわずかな違いによって、東アジア型は欧米型よりもヒト発がんタンパク質SHP2と100倍以上強く結合することを確かめました。東アジア型CagAは、ヒト発がんタンパク質にぴったりはまり込んでしまうために、異常活性化を起こしやすく、細胞のがん化につながるというしくみが明らかになったのです。
構造生物学研究センターの千田 俊哉 教授、千田 美紀 助教、鈴木 喜大 特命准教授(現・茨城高専)、長瀬 里沙 研究員は、結晶化したタンパク質のX線結晶構造解析によりCagAとSHP2との複合体の構造を三次元的に明らかにしました。
放射光科学研究系の福本 恵紀 特任助教は、東京工業大学およびフランス国立科学研究センター、九州大学の研究者らと共同で、 工業的に作られたグラフェンの結晶構造の違いと、それにより超高速な電子の動きが異なる様子を、時間・空間的に高分解能で観測しました。
グラフェンは優れた性質をもつ材料ですが、ナノスケールの不均一な構造が実用化の妨げになっていると考えられています。 研究グループは独自に開発したフェムト秒時間分解光電子顕微鏡(TR-PEEM)を用いて、空間的に不均一な試料において電子が面内方向に伝搬する過程を観察しました。 電子・光電デバイスの性能評価技術として今後が期待されます。
夏の運転停止期間中に、フォトンファクトリー光源棟屋根の補修が行われました。
日照による温度差で、光源棟が変形し、放射光ビームの位置が変動するのを防ぐために、屋根には断熱材が貼られています。
その上の防水シートが劣化したため、補修工事を行ったものです。
J-PARC一般公開の報告は、J-PARC News 第148号のページで。
今年のテーマは「スペクトルで発見。『ロイジービブ』をつかまえろ!!」
ロイジービブとはRoy.G.Biv、つまり赤橙黄緑青藍紫のことです。
フォトンファクトリー 一般公開特設ページはこちら。
KEK一般公開の報告は、KEK一般公開2017を開催のページで。
物構研の来し方を振り返るとともに、 将来を担う中堅・若手研究者が、自らの未来の姿も重ねながら当研究所での研究活動の将来を語ります。
2017年12月27日(水)13:00~19:00
KEK つくばキャンパス 研究本館 小林ホール
終了後、会場隣のラウンジにて懇親会を予定しています。
詳しくは、 物質構造科学研究所 設立20周年記念シンポジウム「物質構造科学の過去・現在・未来」のページへ。
今年の放射光学会はつくばで開催されます。それに合わせ、開催される市民公開講座です。どなたでもご参加いただけます。
2018年1月8日(月・祝)13:30~16:30
つくば国際会議場(茨城県つくば市竹園2丁目20-3)
・「放射光で見えた! 触媒~未来を拓く働き者」 唯 美津木(名古屋大学 物質科学国際研究センター)
・「X線レーザーで見えた!生命を司る精巧な分子機械」 南後 恵理子(理化学研究所 放射光科学総合研究センター)
・「女性研究者によるパネルディスカッション」
癸生川 陽子(横浜国立大学大学院 工学研究院)
永村 直佳(物質・材料研究機構)
保倉 明子(東京電機大学 工学部)
村尾 玲子(新日鐵住金株式会社)
詳しくは、 日本放射光学会 市民公開講座 「放射光で輝く!女性研究者」のページへ。
量子ビームサイエンスフェスタとして3回目の今回は、初めて水戸市で開催されます。
2018年3月2日(金)~4日(日)
茨城県立県民文化センター (茨城県水戸市千波町東久保697)
詳しくは、 2017年度量子ビームサイエンスフェスタ開催のお知らせのページへ。