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物構研News No.34

No.34 2021年12月発行

僕たちは加速器を通してナノの世界をみている
今号には、超分子・ミュオニウム・タンパク質・エレクトライドなどが登場します

Contents


超分子ナノ(メゾ)サイエンスと量子ビーム

千葉大学大学院工学研究科の矢貝 史樹 教授を中心とした研究グループは、超分子でナノ部品を作る研究に取り組んでいます。超分子とは、原子同士が強力な共有結合で連結するのではなく、水素結合やファンデルワールス力のような比較的弱い引力で繋がっている状態を指します。矢貝研究室のメンバーはフォトンファクトリー小角散乱ビームラインのユーザーです。

物構研ハイライト 2021/11/18 超分子ナノ(メゾ)サイエンスと量子ビーム


ミュオニウム実験に向けたビームラインの建設

ミュオニウムは、電子とプラスの電荷を持つ正ミュオンが結合し、水素原子のように振るまう粒子です。ミュオンも電子も素粒子なので、複合粒子である陽子を原子核に持つ水素原子よりも電子状態の精密な理論計算ができます。 ミュオニウムの精密分光実験で得られる値を、理論から計算される値と比較することで、人類がどこまで自然を正確に理解できているかが分かります。そのためには大量のミュオニウムを生成して実験する必要があり、ミュオン科学実験施設(MUSE)に各実験エリアの増設が計画されました。

J-PARC MLF ミュオン実験施設MUSE

ミュオンS2実験エリア

J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)第1実験ホールにある表面ミュオンビームライン(Sライン)では、既設のビームラインを延長した先に新たな「S2実験エリア」が建設されました。 2021年春の共同利用実験終了後、ビームライン機器の設置やビームの誤出射防止などのためのインターロック機器の試験が行われ、S2実験エリアの工事が完了しました。そして7月16日、S2ラインに初めて調整のためのミュオンビームが届きました。 今後はミュオニウムの精密分光実験に向け、実験装置の整備を進める予定です。

MLFミュオンS2実験エリア全景

物構研トピックス 2021/09/24 MLFミュオンS2実験エリアの調整運転を開始しました

ミュオンHライン

同じくMLF 第1実験ホールのミュオンHラインは、ミュオニウムの高精度分光実験など基礎物理実験装置や透過型ミュオン顕微鏡の設置が計画されている大強度ミュオンビームラインです。2012年にビームライン先頭の電磁石を設置したのを皮切りに、徐々に整備が進められ、遂にビームを出す準備が整いました。 Hライン延長部では、透過型ミュオン顕微鏡に加えKEK素粒子原子核研究所と共同でのミュオン異常磁気能率(g-2)・電気双極子能率(EDM)の超精密測定実験も計画されています。

関連した研究成果


クライオ電子顕微鏡の実験棟を建設中

タンパク質の構造を調べるためのクライオ電子顕微鏡(クライオ電顕)がKEKに設置され稼働を開始してから3年半が経過しました。学術機関のみならず企業ユーザーも増えています。
構造生物学研究センター(SBRC)とユーザーの皆さんとの共同研究の成果を図でご紹介します。

現在、クライオ電顕はKEKBリングのほぼ中央にある建物に設置されていますが、クライオ電顕専用の建物を建設、移転が計画されています。完成予定は2022年春の見込みです。

完成予想図
建設作業のようす(2021年11月29日撮影)

物構研トピックス 2021/12/10 クライオ電子顕微鏡の実験棟を建設中


KEK一般公開をオンライン開催しました

KEKでは9月4〜5日に一般公開をオンライン開催しました。物構研は主に2日目にライブ配信を行いました。ご覧くださったみなさま、ありがとうございました。

物構研トピックス 2021/09/15 KEK一般公開2021をオンライン開催しました
物構研トピックス 2021/12/02 エレクトライドとは…


KEKは2021年4月、創立50周年を迎えました

KEK50周年記念事業特設サイト

記念植樹

春の科学技術週間に記念植樹された樹々です。

ニュートンのりんごの木
メンデルのぶどう

記念シンポジウム

2021年11月9日~10日にKEKつくばキャンパス小林ホールから動画配信されました。

シンポジウム冒頭の機構長挨拶のようす

量子ビームサイエンスフェスタをオンライン開催します

2022年3月7日(月)~9日(水)に2021年度量子ビームサイエンスフェスタ・第13回MLFシンポジウム・第39回PFシンポジウムをオンライン開催します。 詳しい最新情報は特設ページでご確認ください。
参加・要旨登録受付中!
お問い合わせ: qbsf2021-office@ml.j-parc.jp(@を半角にしてください)


物構研ロゴ商標登録のお知らせ

高エネルギー加速器研究機構は、物構研(IMSS)ロゴマークの商標登録出願を行い、7月27日、特許庁より9区分について商標登録されました。

物構研のロゴマークは4種の量子ビーム(放射光・中性子・ミュオン・低速陽電子)がモチーフになっています。中央に集まっているようにも外に広がっているようにも見えるデザインは、知を集約し、物質の構造を解明し、その情報を社会に発信する、という物構研のミッションを表現しています。

物構研トピックス 2021/09/15 物構研ロゴ商標登録のお知らせ


オリジナルグッズの特別販売を行っています

物構研では科学をデザインしたオリジナルグッズを制作しています。KEK売店やミュージアムショップでの店頭販売のほか通信販売、不定期ですが自由に色やサイズが選べる受注販売も行われています。物構研ウェブサイト、物構研facebookPF Twitterなどでご案内します。

関連ページ:物構研ライブラリ グッズ

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