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MLFミュオンS2実験エリアの調整運転を開始しました

物構研トピックス
2021年9月24日

J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)第1実験ホールにある表面ミュオンビームライン(Sライン)では、ミュオニウムの精密分光実験へ向けて、新たな「S2実験エリア」建設の計画が進められてきました。

ミュオニウムは、電子とプラスの電荷を持つ正ミュオンが結合し、水素原子のように振るまう粒子です。ミュオンも電子もレプトンという種類の素粒子なので、電子状態の精密な理論計算ができ、複合粒子である陽子を原子核に持つ水素原子よりも精密に理論の検証をすることができます。

電子は原子の中で、軌道と呼ばれる特定の空間領域に存在しています。最も低いエネルギー状態では、電子は1sという軌道に存在していますが、レーザー光などのエネルギーを吸収すると、別の軌道に移ります。電子が別の軌道に移ることを遷移と呼びます。電子が1s軌道にあるミュオニウムに、特定のエネルギーのレーザー光を当てると、電子は2s軌道に遷移します。その遷移エネルギーを精度良く測定することにより、電子とミュオンの間に働く力の強さを高い精度で調べることができます。実験で得られる値を、素粒子間に働く力をほぼ的確に描写する標準理論から計算される値と比較することで、人類がどこまで自然を正確に理解できているかが分かります。そのためには大量のミュオニウムを生成して実験する必要があり、S2実験エリアが計画されました。

S2実験エリアは既設の表面ミュオンビームライン(Sライン)を延長した先に建設されました。今年春の共同利用実験終了後、ビームライン機器の設置やビームの誤出射防止などのためのインターロック機器の試験が行われ、S2実験エリアの工事が完了しました。夏期保守期間直前に実施されたMLFの試験運転に合わせて、7月16日にS2実験エリアビームラインの調整運転を実施しました。

いよいよ、S2実験エリアの利用開始に向けた準備が整い、今後はミュオニウムの精密分光実験に向け、実験装置の準備を進める予定です。

2021年7月16日ミュオンS2実験エリアに初めてのビームが届いた瞬間の信号
MLFミュオンS2実験エリア全景
正面の壁の奥で生成されたミュオンビームが写真手前の実験装置まで運ばれてくる

関連ページ:物構研 ミュオン科学研究系

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