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   image 2003年を振り返って    2003.12.25
 
〜 今年のニュースから 〜
 
KEKの広報室は2001年10月に開設されました。毎週木曜日に更新してきたニュースも今週で110本目になります。今年のニュース記事からKEKの活動を振り返ってみます。

スーパーカミオカンデの復活

今年は新年早々、嬉しいニュースがありました。2001年11月に光電子増倍管が破損した事故から復旧したスーパーカミオカンデにKEKからニュートリノを打ち込むK2K実験が昨年末に再開し、再開後の初めてのニュートリノの反応事象が1月25日に検出されました。その後、夏の加速器のメンテナンスに合わせて新型の粒子検出器を設置し、実験は順調に進んでいます。(図1)。

Bファクトリーの成果

今年のBファクトリーは大きなニュースが相次ぎました。1月にはBelleグループがB中間子から2つのπ中間子への崩壊過程の観測でもCP対称性の破れを確認しました。5月にはKEKB加速器がルミノシティ(衝突反応の頻度)で設計目標を達成しました。8月の国際会議では、B中間子がφ(ファイ)粒子とKS(Kショート)粒子への崩壊する過程の観測から、標準理論を超える現象を示唆する結果が得られました(図2)。また11月にはクォーク4個からできていると思われる新しいタイプの中間子X(3872)の発見が発表されました(図3)。

タンパク3000プロジェクト

タンパク質の構造・機能を解明することで、生命現象を解明し、病気の治療などに有効な手立てが見つかると期待されています。KEKでは2002年の夏から始まったタンパク3000プロジェクトで、放射光研究施設を用いてタンパク質の構造の決定を行う重要な役割を果しています(図4)。PF-ARという高エネルギーの放射光リングに設置された構造生物研究用ビームライン(NW12)では、従来の10分の1ほどの時間でタンパク質の構造解析が可能になりました。

建設が進むJ-PARC

KEKと日本原子力研究所が東海村に共同で建設を進めている大強度陽子加速器施設(J-PARC)では、線形加速器が設置される建物や実験室など建設が急ピッチで進められています(図5)。今年になって施設建設地の一部に中世から近世時代のものと推定される塩田などの埋蔵文化財があることがわかり、建設工事のかたわら、発掘調査が進められています。

加速器用の大型偏向磁石なども順調に製作が進んでいます。11月には加速器初段部に用いられるドリフトチューブ型リニアック(DTL)の試験に成功し、当初の目標を達成しました。

J-PARCでは、ニュートリノを295km離れたスーパーカミオカンデに入射するためのビームラインの建設計画を進めています。ニュートリノ実験についてはヨーロッパのCERN研究所やアメリカのフェルミ国立加速器研究所なども実験計画を急ピッチで進めており、総合科学技術会議や科学技術・学術審議会がJ-PARC建設計画の評価と再検討を行いました。

クォークの研究に大きな進展

兵庫県のSPring-8では7月に大阪大学の中野貴志教授らのグループがクォーク5個からなる新粒子を発見したと発表しました。また、アメリカのブルックヘブン研究所では、日米科学技術協力事業に参加する東京大学の浜垣秀樹助教授らのグループなどがクォークグルーオンプラズマの兆候を強く示唆する実験結果を発表するなど、素粒子・原子核物理学を大きく進展させる発見がありました。

加速器による応用研究

加速器を使った応用研究でも様々な話題がありました。超冷中性子の研究(図6)や地球深部の岩石の状態をX線で探る研究磁場を伴う金属系超伝導体PrOs4Sb12の構造の解明(図7)、静電型貯蔵リングを用いた遺伝子の損傷過程の解明時間分解X線吸収微細構造(XAFS)によるリアルタイムの触媒反応の研究、などです。

加速器や測定技術の進展

これらの最先端の研究を支える加速器や測定の技術でも重要な進展をご紹介することができました。固定磁場強収束加速器(FFAG)の開発位相情報利用のX線撮像法Belle測定器のシリコン検出器(SVD2)(図8)、レーザーウェーク場加速LHC強収束用四極超伝導電磁石スーパーバンチ加速放射線量測定用PADLESCバンド加速システムBESS-Polar実験の準備試験、などです。また、リニアコライダーなどの将来の加速器のための研究開発なども進んでいます。

科学を身近に

今年のKEK一般公開には3900人の方がいらっしゃいました。修学旅行や研修などでKEKを訪れる学校や企業や団体の方も少しずつ増えています。KEKではより多くの人々に科学に親しみを持ってもらおうと、霧箱教室を開いたり科学フェスティバルなどのイベントに参加しています。来年はもっといろいろな場所で皆さんとお会いできるよう、いろいろな企画を考えています。KEKの今後の研究活動にご期待下さい。




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    2003年のニュース一覧
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[図1]image東京大学宇宙線研究所
実験再開後、スーパーカミオカンデで観測されたニュートリノ事象。図は5月17日のもの。
[拡大図 左(50KB)右(31KB)
 
 
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[図2]
B中間子がφ中間子とKs中間子に崩壊する過程でB中間子を構成するボトムクォークが「量子トンネル効果」と呼ばれる現象により、一瞬だけ35倍も重いトップクォークと16倍重いW粒子に化ける過程を示したペンギンダイヤグラム。
拡大図(11KB)
 
 
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[図3]
Belleグループが発見したX(3872)粒子の生成と崩壊の模式図
拡大図(52KB)
 
 
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[図4]
KEKの放射光施設NW12で解析された糖転移酵素の立体構造。
 
 
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[図5]
J-PARCの完成イメージ図。
拡大図(70KB)
 
 
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[図6]
大阪大学核物理研究センターの陽子ビームラインと今回開発された新世代超冷中性子源。
拡大図(48KB)
 
 
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[図7]
希釈冷凍器を備えたミュオン・スピン緩和実験装置。
拡大図(58KB)
 
 
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[図8]
Belle測定器の新型シリコンバーテックス検出器が完成。
拡大図(42KB)
 
 
 
 
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