3月7日、機構内にて平成22年度KEK技術賞の表彰式が行われ、放射光科学第一研究系の小菅隆(こすげ・たかし)技師が受賞しました。小菅氏は平成12年度に次いで2度目の受賞となります。 同賞は平成12年度に発足し、機構の技術開発の中でも特に優れた技術に授与されるもので、創造性・具体化・研究への貢献・技術伝承の努力などの項目について審査されます。
今回、受賞対象となった技術は「メッセージ配信システムSTARSの開発と放射光ビームライン制御への応用」です。フォトンファクトリー(PF)には年間4,000名もの共同利用研究者たちが訪れ、実験を行っています。PFで実験を行う人が実験装置の制御に使うコンピューターはOSも、使用されるプログラミング言語なども多種多様です。小菅氏はこのような背景から「OSやプログラミング言語に依らず、しかもシンプルなプログラムで、制御システムを構築する」をコンセプトにSTARSを開発しました。
STARS(Simple Transmission and Retrieval System)は、元々ビームラインのインターロックシステムに開発されたものでしたが、これを応用し、簡単なコマンドにより実験データなどを取り込んだり、普段使いなれた自身のパソコンからPFの実験装置を制御することが可能なシステムになりました。既にPFおよびPF-AR合わせて30ビームラインに導入されているのみならず、山口大学、核融合科学研究所、東北大学などでも広く使われていることや、名古屋大学シンクロトロンのビームラインへの導入が決定されていることも高く評価されました。
KEK技術賞専門部会長の上野健治氏は「ユーザーにとって簡単で便利なシステムであり、機構内のみならず他大学への広がりを見せており、具体化と研究への貢献度、伝承において特に素晴らしい」と評しました。