1月12日、つくば国際会議場にて構造物性研究センター(CMRC)の全体会議が行われました。CMRCで現在進められている7つのプロジェクトについて、進捗とこの一年の成果、今後の計画について発表されました。
午前は「強相関電子系における軌道混成秩序とその外場応答」「分子性結晶における構造の外場応答と相制御」「幾何学的電子相関がもたらす異常金属相の解明」「磁性薄膜・多層膜における表面・界面の原子構造、磁気状態および電子状態」の4プロジェクトから発表がありました。
多層薄膜の分野では、トンネル磁気抵抗(TMR)素子の性能に関わる表面や界面を調べる研究について発表されました。波長分散型軟X線吸収分光法に、開発中の「偏光スイッチング」を組み合わせることで、分子の種類と量に加え、向きが分かるようになること。また中性子を利用すればスピンの向きも分かり、さらに超低速ミュオンが実現すれば、表面から深さ方向に詳細なデータを得られることなど、展望を含めた報告がありました。また、鉄とロジウムの薄膜にアルゴンビームを照射、熱処理することで、表面の磁性を制御するという新しい技術について、その効果、分析結果について発表がありました。
午後は「遷移金属元素と軽元素の挙動から見る地球惑星内部の構造と物性」「ソフトマターの階層的秩序化と動的構造」「強相関酸化物超構造を用いた新奇量子状態の観測と制御」の3プロジェクトから発表がありました。 ソフトマターの分野では、生命体の動きをモデル化して全体の機能を調べるため、細胞膜などの界面、非平衡状態での振る舞いを調べています。その中から、親水基と疎水基の両方をもつ両親媒基が集まって出来るラメラ構造のでき方の違いが細胞分裂の構造と関わっていると考えられることなどについて発表がありました。
最後に、村上洋一センター長は「個々のプロジェクトは充実し、良い成果も出てきています。これからは物構研のコンセプトでもあるマルチプローブを使って、新たな物性を発見するなど、今までにない研究をやっていきたい。」と抱負を語りました。