1月19日、20日、茨城県量子ビーム研究センターにて、MLFシンポジウムが開催されました。これはJ-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)における研究成果や装置の開発状況などを発表するシンポジウムでJ-PARCセンターとKEK物構研の主催により年一回開催されているものです。
シンポジウムは「研究成果に加え、将来に向かっての話を中心に議論していただきたい」との新井正敏 物質・生命科学ディビジョン長の挨拶により開会しました。原 克彦 文部科学省量子放射線研究推進室長の来賓挨拶では、「我が国の基盤を支える大型研究施設として、特にグリーンイノベーション、ライフイノベーションの分野で良い成果をだし、社会に還元されることを示していただきたい。」との言葉をいただきました。続いて、永宮正治J-PARCセンター長、下村 理KEK物構研所長、市村敏夫JAEA原子力科学研究所所長からの挨拶がありました。
MLFの復旧状況の報告では、組織を越えて皆が一丸となって取り組んだこと、そして昨年12月末にMLFへビームを受け入れ、中性子の発生を確認でき、いよいよ再開できる状態になったことが報告されました。またMLFの新展開として、中性子源、中性子利用、中性子基盤、ミュオンの各セクションからも復旧活動と将来計画について詳細な報告がありました。午後には東北大学の大野英男教授による招待講演が行われ、印加する磁場によって電気抵抗が変わる強磁性半導体や、異常ホール効果について、研究成果が発表されました。
2日間にわたり、MLF利用による研究成果、装置開発について5つのセッションに分けて発表がありました。リチウムイオン電池や水素貯蔵などグリーンイノベーションに関する研究や、超弾性材料や磁場記憶合金など新しい物質材料に関する研究、表面・界面の振る舞いに着目した磁気デバイスに関する研究やその測定手法など、多岐にわたる発表があり、活発な議論が展開されました。
MLFでは1月24日から施設利用実験が再開されています。「運転再開に対する期待に応え、良い成果を出していきたい。」と門野良典KEK物構研教授から力強い言葉で締めくくられました。