1月23日、KEKと東京大学の共催により、「現象の可視化」をテーマにした計算科学と実験科学のコラボレーション・シンポジウム「第6回学融合ビジュアライゼーションシンポジウム」が機構内にて開催されました。このシンポジウムは物質科学、生命科学、素粒子物理学などの各分野で行われている、計測・解析・シミュレーションなどの可視化手法を先鋭化、融合することにより、新たな研究分野を推進していくことを目的に行われています。
冒頭、佐々木裕次教授(東京大学 新領域)の挨拶からシンポジウムが始まりました。現在の研究は、物質系・生物系などの分野ごとに行われており、またナノ、マイクロ、ミリと大きさによる階層的な構造ごとに個別の研究が進んでいます。しかし現象の本当の姿は、それぞれが連動して動いているため、それらをつなぐ全体から一分子までを、階層的に統合計測することが必要とされています。
生命科学の分野からは、X線結晶構造解析により、細胞分裂など生命現象の要として注目されているタンパク質群を可視化する研究について報告されました。また、単分子のタンパク質に照射したX線散乱像から立体構造を復元するための統計的な解析手法について新しい提案がなされ、多角的な議論が展開されました。物質科学の分野からは、強誘電体の分極起源が放射光を用いた精密電子密度解析から議論され、また物質の状態変化を時間軸に沿って追跡するための手法開発と、それによって観察された単結晶が衝撃波によって壊れる瞬間などが紹介されました。素粒子物理学の分野からは、陽子が高速で衝突しクォークが生み出される際の現象を、相対論的に流体力学の観点から検証する手法が発表され、また質量の起源とは何かという問いかけから、質量を理解する鍵は真空にあるとして、量子色力学の数値シミュレーションにより可視化された真空の様子が紹介されました。
研究分野と研究手法の異なる研究者たちが「可視化」をキーワードに一堂に集い、まさに学融合のシンポジウムとなりました。