2月9日、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にて建設されている中性子のビームラインBL09、SPICA（スピカ）に中性子ビームを導入し観測しました。
初ビーム測定結果
Neutronoptics社製100x100mm中性子カメラによる中性子ガイド管終端より1m位置での撮影 (a)障害物なし(b)カドミウム金属文字像の撮影
図2 観測の様子
このビームラインは中性子の高い透過性を利用し、蓄電池を構成する様々な材料中の原子配列を調べ、構造と組成を分析する装置です。装置に求められた性能を満たすためMLFの建物から長く飛び出たビームラインとなっています。2010年6月より建設開始し、MLF建屋の外側に専用建屋を増築しました。2011年3月11日の東日本大震災で被災しましたが、現在はいくつかの修復を加え、中性子実験が出来る状態となりました。
SPICAでは材料に中性子ビームを照射した際に現れる干渉縞から蓄電池材料中の原子配列を調べられます。中性子はリチウムなどの軽元素を効率良く観察できるため、この装置で得られたデータから現在広く利用されているリチウム二次電池中の化学反応機構の解明など、構造という視点から蓄電池材料の基礎研究から応用研究の広い分野の研究推進が期待されています。特にこの装置では、高温・低温、ガス中、磁場、電場など様々な環境下でその材料のその場(in situ)測定が可能となります。これらの試料環境装置を今後整備をすすめながら、研究を推進していきます。 なお、SPICAは独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）の革新型蓄電池先端科学基礎研究事業（RISING事業）によって建設が進められています。
図3 SPICAの概念図
右上の水色のパイプから中性子ビームが入射される。試料はこの円筒の中央付近に置かれ、周りに設置される測定機器（黄色いフレーム内、灰色部分）によって中性子の干渉縞が測定される。
