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第2回ERLシンポジウム開催

物構研トピックス
2012年3月21日

3月14日、つくば国際会議場にて、次世代放射光光源であるエネルギー回収型ライナック(ERL)によって可能となるサイエンスに関する第2回ERLシンポジウム-持続可能な社会に向けて-が開催され、国内外の研究者143名が集いました。

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集合写真

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シンポジウムの様子

ERLシンポジウムは、次世代の放射光光源として検討されている加速器ERLを「持続可能な社会を実現する放射光」と位置づけ、これからの社会に向けてERLが果たす役割を中心とした講演・討論が行なわれました。下村理KEK物構研所長の挨拶により始まった第一部では、鈴木厚人KEK機構長からERLを含めた加速器技術全体で社会へのアプローチを推進していくべきとの言葉がありました。また、スタンフォード大学のキース・ホジソン教授(Prof. Keith Hodgson, SSRL)からはXDL2011での研究事例を含め、世界のサイエンスの動きとERLが狙っているサイエンスについて講演があり、海外の施設からはDESY所長のヘルムート・ドッシュ博士(Dr. Helmut Dosch)とコーネル大学のマウリー・ティグナー教授(Prof. Maury Tigner)よりビデオメッセージがありました。続いて原 克彦 文部科学省量子放射線研究推進室長と水木純一郎放射光学会会長より来賓挨拶をいただきました。

第二部では、特別基調講演として2010年のノーベル化学賞受賞者である根岸英一特別教授(パデュー大学)による「d-Block遷移金属触媒が21世紀を救う」と題した講演が行われました。パラジウムなどの23種類のd-Block遷移金属による触媒が選択性の高さ、簡便性、安全性に優れており、その触媒反応が持続可能な社会を実現するにあたり、有効な手段であることが示されました。その後、ERLとそのサイエンスについて河田洋ERL計画推進室長より全体像が発表され、5件の招待講演が行われました。浅島 誠 東京大学名誉教授(産業技術総合研究所)からは、生命科学と構造科学を融合させ、医薬、食料へと活かす構造生命科学について、有馬孝尚教授(東京大学)からは、今後も増大する情報通信量と省エネを両立させるマルチフェロイックス物質科学について、瀬戸山亨 三菱化学科学技術研究センター合成技術研究所・所長からは、既に企業の立場で開発が進められている、持続可能を目指したグリーンイノベーションへの取り組みと実用化の課題について、高橋嘉夫教授(広島大学)からは、地球温暖化の評価や生物を用いたレアメタルの集積など環境・資源科学について、松田巌准教授(東京大学)からは光誘起による触媒反応や半導体のキャリア制御とキャリアが形成時の非平衡状態解明への期待などについて講演がありました。

ERLの狙うサイエンスについて、多分野からの議論の深まったシンポジウムとなりました。


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