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平成23年度 物構研定年退職者 記念講演会開催

物構研トピックス
2012年4月 2日

3月22日、機構内にて物構研退職者記念講演会が行われました。平成23年度をもって定年退職されたのは、飯田厚夫教授、池田進教授、小出常晴准教授、小林克己教授、前澤秀樹教授です。

飯田厚夫教授

下村理物構研所長より全員の経歴と業績が紹介され、各講演が行われました。 飯田教授は放射光のマイクロビーム装置の開発・改良を手がけ、その分光学的応用・回折実験への応用をすすめ、その後、複合分析装置を実現させました。講演は入所当初の超微量分析ワーキンググループからX線顕微鏡の開発の話から始まりました。X線を集光するマイクロビームは更に改良され、現在もPFのBL-4Aに導入されています。そしてマイクロビームは、その頃出始めた、多層薄膜の観測や液晶中の局所構造、周期的構造を初めて解くなどの成果を収めました。

池田 進教授

池田教授は1978年に入所し、陽子加速器を用いた中性子実験に関わり、中性子源、輸送、実験装置に至る一連の開発を行われました。講演では「回帰線」をキーワードにKENS創設からJ-PARCに至るまでの苦労話、中性子散乱による水素結合をしている水素の振動の観測やそれを様々な物質にわたって統一的に説明する枠組みについて発表されました。また、研究以外では、大学共同利用の確立への貢献、分野の異なる研究者の交流を目的に「つくばスパイラル」を行うなどしてきました。

小出常晴准教授

小出准教授は1981年に入所し、光源研究系で、放射光基幹チャンネルの設計・制作・立ち上げ・運転に従事されてきました。1997年からは物質科学研究系(現在の放射光科学研究系)に移り、極紫外線・軟X線領域の円偏光を利用したXMCD(X線磁気円二色性)という手法を展開されています。講演では円偏光放射光を作り出した時や初めてNiにおけるXMCDシグナルを観測された時の苦労話、小出准教授が開発された多くの装置、そしてそれを用いたXMCDによるナノスケール磁性体の研究成果について熱く語られました。

小林克己教授

小林教授は、放射線生物作用の初期過程であるエネルギー付与過程と生物影響の関係について研究をされてきました。講演では、細胞へのエネルギー付与過程を制御した基礎研究、それが発展してがん細胞に選択的にエネルギーを与える研究を進めていること、低線量放射線影響研究のためのマイクロビーム細胞照射装置と最近の展開について話されました。最後に、自分のやりたい研究を可能にしてくれたフォトンファクトリーに感謝の言葉を述べられました。また、小林教授は2010年から初代共同利用研究推進室長を勤められ、国内外から訪れる研究者の受け入れ環境の改善や共同利用者数の拡大に尽力されてきました。

前澤秀樹教授

前澤教授は、1981年から放射光の分光光学系、ビームラインの設計制作、実験ステーションの建設を手がけてきました。放射光の輝度を高めるための挿入光源、アンジュレーターは、初期のPFで多くの先駆的な研究開発がなされ、その成果が第3世代以降の放射光施設の設計指針に大きく影響を与えたことを指摘されました。また、放射光を用いた電子ニュートリノ質量の測定では、大きな問題に直面し、何年も悩んだことなど、研究者の生の姿を語りました。講演の後半では、前澤教授が長年取り組んでこられた、極紫外線・軟X線領域の光学素子理論の構築の話題を紹介し、最後はお世話になった方々への感謝の言葉で締められました。

懐かしい写真やエピソード満載の講演会となりました。


定年退職者および講演タイトル

  • 飯田 厚夫 「放射光・分析・X線光学」
  • 池田 進  「回帰線」
  • 小出 常晴 「円偏光を利用した内殻磁気光学の研究とドラマ」
  • 小林 克己 「放射光を用いた放射線生物研究 -初期過程の解明からとガン治療への応用まで-」
  • 前澤 秀樹 「アンジュレーター光とニュートリノ質量と反射の理論