4月17日、文部科学省による平成24年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の表彰式が行われ、KEKフォトンファクトリー(PF)を共同利用した研究により、東京工業大学資源化学研究所の山元公寿(きみひさ)教授が科学技術賞(研究部門)を、東京工業大学大学院理工学研究科の木口 学准教授が若手科学者賞をそれぞれ受賞しました。
この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めた者について、その功績を讃えることにより、科学技術に携わる者の意欲の向上を図り、もって我国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として定められています。
山元教授の受賞対象となった研究は「精密金属ハイブリッドナノ材料に関する研究」です。中心から樹状に広がる高分子デンドリマー(図1)を発見し、そこに白金などのナノ粒子を精密に集積する金属-有機ハイブリッドナノ材料を世界に先駆け創成しました。特にデンドリマーをリアクターとして利用した金属微粒子の合成法は、ナノメートルサイズはもちろん、直径が1ナノメートルを切るサイズの微粒子まで可能な画期的な合成法であり、発光素子や太陽電池、触媒などの有用な機能材料の開発を大きく変えました。山元教授は、デンドリマーを用いて合成された金属微粒子の構造をフォトンファクトリーのビームラインBL-12CにてEXAFS( 広域X線吸収微細構造/ Extended X-ray Absorption Fine Structure)を用いて解明、金属-有機ハイブリッド材料の合成環境と触媒活性の関係を明らかにしました。
金属元素を巧みに使える精密無機金属合成として新しい化学を拓く、次世代のナノテク材料への寄与が高く評価されました。
木口准教授の受賞対象となった研究は「制御された低次元ナノ構造体に発現する新規物性の研究」です。エレクトロニクス材料は高集積化に伴い、より微小な電子素子が必要とされています。木口准教授は二次元薄膜、さらには単分子接合などの新規ナノ構造体を作製、その原子・電子構造を捜査プローブ顕微鏡(SPM)やPFのビームラインBL-7A、 BL-11Bを利用したXAFS(X線吸収微細構造/ X-ray Absorption Fine Structure)によって解明し、物性を研究しました。そして、金属と絶縁体界面に形成される金属誘起ギャップ準位を実験的に観測することに成功しました。また、通常は絶縁体であるベンゼンが単分子接合すると金属的な伝導を示すなど、単分子接合に特徴的な物性を発見しました。そして、単分子接合をはじめとする低次元ナノ構造体が新たな物性探索の場であることを示し、新たな研究分野を切り拓いたことが評価されました。