総合研究大学院大学(総研大)物質構造科学専攻の呉 彦霖 (Yanlin Wu)氏が平成24年度(第3回)総研大学長賞 を受賞されました。4月11日に総研大葉山本部にてポスター発表会が行われ、翌12日に9名の受賞者に対して授賞式が行われました。
受賞した呉 彦霖氏(左)と賞状(右)
受賞対象となった研究テーマは「X線多重回折を用いた位相コントラストイメージング法による高感度撮像システムの開発と応用」です。
X線位相コントラストイメージングは、X線が試料を透過する際に生じる屈折や位相の変化を画像コントラストに変換して抽出する方法で、生体軟組織や軽元素から構成される試料の非破壊3次元観察に有効な手法です。呉氏は、試料内部の電子密度差に対応した画像上の濃度分解能を向上させるために、X線の回折を複数回繰り返すX線光学素子の開発とファントーム(研究用模型)を用いたイメージングによるシステム評価研究を行っています。X線光学系とファントームの独自設計と製作、そして放射光実験を進めてきました。
従来のX線位相コントラストイメージング法に比べ、この方法では、生体軟組織中の微小な変異など、より小さな電子密度差をイメージングすることが可能になると期待されます。
また、この審査にあたって行われた口頭発表では、研究により新しい知見が得られつつあること、発表では他分野の研究者、学生にもわかりやすいように研究分野の状況を俯瞰的に説明するとともに自分の視点をきちんと説明できたことも高く評価されました。
呉氏の指導にあたった兵藤一行KEK物構研准教授は、「将来は、きっと日中のアジアの架け橋となって活躍してくれる。」と期待のコメントを寄せました。