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高木 宏之氏、日本加速器学会 奨励賞を受賞

物構研トピックス
2012年10月19日

8月9日、第9回日本加速器学会が行われ、東京大学物性研究所の高木 宏之助教が第8回日本加速器学会奨励賞を受賞しました。
この賞は、若手研究者を主な対象として加速器関連分野の優れた研究に対し贈られるものです。

今回、受賞対象となった研究は「パルス六極磁石による入射方式の開発」です。加速器の入射システムの研究に従事してきた高木氏は、世界に先駆けてパルス6極電磁石を使った蓄積型放射光源の電子入射方式を提案、フォトンファクトリー(PF)にて実証実験を行い、トップアップ運転時の蓄積ビームの振動を容易に抑制する入射方法の実用に成功しました。

PFのような放射光源加速器では、放射光としてエネルギーを放出しながら電子が加速器リングを周回しています。 その間に失った電子を補うための入射システムが、従来使用されている2極のキッカー電磁石です。電子を合流させるために位置などを調整する電磁石が複数台必要ですが、その磁場がリング中で周回している電子(蓄積ビーム)に影響すると、電子から発生する放射光にも影響が生じてしまいます。今回開発されたパルス6極電磁石は、一台で位置を調整でき、かつ電磁石の中心部では磁場が打ち消し合ってゼロとなるため、ここに蓄積ビームを通すことで、蓄積ビームへの振動を抑えることができます。

この入射システムは2008年春にPFリングに導入、調整を重ね2011年には約2ヶ月にもわたる継続運転を行い、長期安定性を実証しました。その後も大きなトラブルは無く、現在ではPFユーザー実験中の入射で常に使用されています。

この成果により、パルス六極磁石によるビーム入射は、キッカー電磁石による入射よりも実用性に優れる点が広く認識され、世界中の放射光施設で導入が検討されています。


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