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郷田秀一郎氏、極限環境生物学会奨励賞を受賞

物構研トピックス
2012年12月 6日

12月2日に行われた、極限環境生物学会年会にて、研究奨励賞の授賞式が行われ、長崎大学の郷田秀一郎准教授が受賞されました。この賞は、極限環境生物学会員である40歳以下の研究者を対象に、極限環境生物分野で、新しい科学または技術の芽を作った人に対して授与されるものです。

受賞対象となった研究は「超好熱菌由来グルタミン酸脱水素酵素の熱活性化機構の解明」です。温泉や海底熱水噴出孔の周りのような高温環境では、生物の身体を構成し、生命活動を担うタンパク質が変性してしまうため、通常の生物は生きていられません。80℃以上という過酷な環境下でも生息する微生物を好熱菌と言います。郷田氏は、その中でも特に高温耐性のある超好熱菌がもつ酵素、グルタミン酸脱水素酵素が働くしくみについて調べました。

不活性型/活性型グルタミン酸脱水素酵素の模式図

グルタミン酸脱水素酵素(GDH)は、大腸菌を用いてリコンビナントタンパク質として生産すると、ほとんど活性を有しない不活性型酵素として得られます。しかし、これを90℃で15分間加熱すると天然由来の酵素と同程度まで活性化されます。これまでの研究で、活性化した時の酵素の立体構造はX線結晶構造解析によって解明されていましたが、不活性型の構造は未解明でした。立体構造の解明には、タンパク質を結晶化させることが必要ですが、不活性型の酵素は結晶にすることが困難でした。そこで郷田氏は、フォトンファクトリーのビームラインBL-10Cを利用したX線小角散乱(SAXS)測定からモデル構造の構築を行いました。
グルタミン酸脱水素酵素は、6つのサブユニットから構成されており、活性型と不活性型では、サブユニットの構成が変わることで中央にできる空間の形状が変わります(下図)。酵素が活性化するには、サブユニットによる正しい空間配置の形成が重要であることを明らかにしました。今後、SAXS測定の時分割測定を利用して、不活性型から活性型へ、立体構造の変化過程を解明していきたい、と郷田氏は語っています。

画像提供:長崎大学 郷田秀一郎


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