12月18日~21日まで、J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)にて第1回MLFスクールが開催されました。
このスクールは、次世代の研究者を育成し、サイエンスの質の向上を目的に、J-PARCセンター、CROSS東海、茨城県の主催により発足したもので、 これから中性子やミュオンの利用実験を検討している学生から大学の研究員、企業の方など24名が参加しました。 共催であるKEK物構研からは中性子のビームラインBL08 SuperHRPD(粉末回折装置)とミュオンのビームラインD1(ミュオンスピン緩和測定装置)の2台の実験装置と共に、9名の職員が講師を務めました。
講義の様子
実習の様子
BL08にて測定したデータを見ているところ
初日はオリエンテーション、J-PARCの利用に必要な安全教育が行われ、2日目から本格的な講義と実験の実習が始まりました。 講義では、現役の研究者から中性子科学、ミュオン科学の概要と最近の研究について紹介されました。 研究用原子炉、加速器による中性子それぞれの特徴と、装置、研究例の紹介が、 続いてミュオン科学についても基礎知識とミュオンを利用した物性研究について、講義がありました。
2日目の午後からは、中性子6課題、ミュオン1課題の計7グループに分かれ、MLFの各実験装置にて実習に取り組みました。
このうちの1つ、ビームラインBL08、SuperHRPDを利用した中性子粉末回折の実験では、リチウムイオン電池の正極材料に利用される リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物の構造を調べました。粉末状の試料を装置にセットし、1試料につき約5時間ずつ測定を行います。 並行して、データ解析の行い方を練習し、順次取れたデータから構造を調べました。
受講者は、全く初めての方から、既に原子炉での中性子実験経験者で、パルス中性子との違いを知りたいと参加した方、 新たにミュオン利用を検討していると参加された方など様々です。 測定の待ち時間には、他の装置を見学したり、研究室で検討している測定の具体的な相談をする様子などが見られました。
報告会の様子
最終日には、グループ毎に実習の内容をまとめ発表する報告会が行われました。 試料の大きさや測定にかかる時間、データの読み方など、互いに質問しあい、理解をさらに深めていきました。
最後に、新井正敏MLFディビジョン長から一人ずつ修了証が手渡され「次J-PARCに来るときは、ぜひ利用していただきたい。」とメッセージが送られました。 このスクールに関わった全ての方への感謝とともに、幕が閉じられました。