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フォトンファクトリーの春休み

物構研ハイライト
2013年4月25日

今年は桜が例年より2週間も早く咲きはじめ、ちょうど春休みの頃にお花見をした方も多かったのではないでしょうか。桜の季節が終わって、間もなくゴールデンウィークが始まる時期ですが、少し時を巻き戻して、春休みを振り返ってみたいと思います。フォトンファクトリーは、どのような春休みを過ごしたのでしょうか。

新しいビームラインを作る

フォトンファクトリーは、2月25日、月曜日の朝に平成24年度の運転を終了しました。4月始めに運転が再開されるまでの1ヶ月ちょっとの間、今年は特に忙しい春休みだったようです。

25日の朝、加速器の運転が止まるとすぐ、ビームラインBL-15では物品の移動作業が始まりました。その週の後半からはビームラインの撤去が始まり、最初の2週間で、BL-15にあったビームラインは跡形もなく無くなってしまいました。

図1a:2012年12月のBL-15。オレンジ色の実験ハッチ(実験装置が入った小屋)のBL-15Aは、一足先にこの後間もなく撤去された。
図1b:2013年2月25日(平成24年度運転終了時)。BL-15B、15Cの2つのビームラインはこの後間もなく撤去される。
図1c:2013年3月4日。ビームラインの撤去がほぼ終了し、実験ハッチだけが残った状態。
図1d:2013年3月18日。旧BL-15は全て撤去され、新BL-15用のメインハッチ(実験装置に光を導くための装置が入った小屋)が新しく建設された。実験装置が設置される場所の周辺は床工事の準備がされている。

ここには、これから新しいビームラインを作っていきます。高輝度の光を発生させることのできる挿入光源、アンジュレーターを設置し、新しい2つの実験装置が作られる予定です。1つはセミマイクロビームを使ったX線吸収微細構造(XAFS)装置、もうひとつはX線小角散乱装置です。

XAFS法と小角散乱法は、放射光で最も良く行われている実験法で、どちらも結晶でない物質の構造や機能に関する情報が得られるため、試料の制約がほとんどなく、工業材料や触媒から生体・環境試料など広い分野で利用されています。特に、加工中の材料の構造変化や、生体内と同じ条件での生体物質の構造変化など、試料の周りの環境を制御した実験が得意です。XAFSでは局所的な構造や化学状態、小角散乱では原子スケールからマイクロメートルオーダーまでの幅広い構造情報と、それぞれ違った情報が得られます。新しいビームラインでは、1つの材料をこの2つの手法で複合的に調べることが可能になり、ナノテクノロジー材料やソフトマター材料などの、組成が空間的に不均一な試料中の微小な領域の構造情報を捉えることができるようになります。

新しいビームラインでは、細く絞った放射光ビームを、不均一な試料の特定の領域にビンポイントで照射するテクニックが必要になります。このため、30年以上前に建てられた建物の床の構造では、装置の精度を保てないことがわかりました。そのため、装置を設置する部分の床に大きく穴を開け、新たに床を作っています。春休みにはここまでの作業が行われたので、現在、BL-15付近の床には穴が開いたままです。2階の見学者用の通路から見下ろすと、大きく穴の開いた実験ホールを見ることができます(図1f)。

図1e:2013年3月19日。床工事が始まる。
図1f:2013年4月。夏の停止期間まで工事はお休み。

BL-15のちょうど逆側にあるBL-2でも同様にビームラインの撤去が行われました。BL-2は、楕円の形のフォトンファクトリーリングで一番長い直線部が取れるビームラインですが、挿入光源もビームラインも1980年代に建設されたものが使われていました。

ここには株式会社日立製作所との共同研究により、リチウムからカルシウムまでの幅広い元素の電子状態・化学結合状態を解析できるビームラインが建設されます。ビームラインは今年の夏休みに建設、挿入光源は来年の春休みに設置予定で、現在はBL-1とBL-3の間に広い空間が空いています(図2)。

図2:2013年4月のBL-2付近。

ビームラインを分岐する

同じく見学者用通路からよく見渡せるBL-13では、新しい分岐ビームラインの設置が行われました。BL-13は2009年に建設された比較的新しいビームラインで、有機分子や生体分子に含まれる軽い元素の電子状態を調べる研究に最適化されたビームラインです。運転終了後に測量を開始し、ビームラインを設置し、真空状態にして、制御システムを組み込む、といった作業が1ヶ月の間に行われ、4月からは調整・立ち上げが順調に行われています。新しくできた分岐ビームラインBL-13Bには今年の夏休みに光電子分光装置が設置され、専用の実験ステーションとしてより便利に使えるようになる予定です。

図3:2013年3月のBL-13。新しい分岐ビームラインを作るための測量中。

このようにフォトンファクトリーでは、古くなったビームライン・装置を最新の技術やニーズに合わせた新しいものに変える作業が絶えず行われています。建設後30年以上を経過した研究施設ですが、まだまだ現役で、最新の成果を生み出し続けています。

関連サイト

放射光科学研究施設 フォトンファクトリー