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丹羽 尉博氏、KEK技術賞を受賞

物構研トピックス
2013年2月20日

2月19日、機構内にて平成24年度KEK技術賞の表彰式が行われ、放射光科学第二研究系の丹羽 尉博(にわ やすひろ)技師が受賞しました。 同賞は平成12年度に発足し、機構の技術開発の中でも特に優れた技術に授与されるもので、創造性・具体化・研究への貢献・技術伝承の努力などの項目について審査、決定されます。

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鈴木厚人KEK機構長(前列中央)と受賞者ら
受賞者:左から、丹羽 尉博 氏、広瀬 恵理奈 氏、吉本 伸一 氏

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図2 湾曲結晶による分光の模式図

受賞対象となった技術は「二結晶型波長分散XAFSシステムの開発」です。波長分散型XAFS(ザフス、X-ray Absorption Fine Structure / X線吸収微細構造)は、放射光を利用した実験手法の一種で、 入射するX線のエネルギーを変えながら物質による吸光度を測定し、注目した原子の周囲の局所的な構造や化学状態を調べる手法です。

通常のXAFS測定では、X線エネルギーを連続的に変えながら数秒ずつ照射して、1本のスペクトルを得るのに数分から数10分かかります。これは時間分解能が数分~数10分であることを意味しており、化学反応過程など、物質の変化する様子を捉えるには不向きです。そこで開発されたのが、波長分散XAFSです。この手法は入射X線を湾曲結晶に当てることで分光したX線を試料に照射し、一度に幅広い波長領域のシグナルを得ることができます。この手法では、時間分解能は検出器の性能によって決定され、PDA検出器※1などを利用することで時間分解能はミリ秒~サブナノ秒にまで向上されました。

もう1つの開発要素は、、試料の後ろ側にもう一枚湾曲結晶を配置したことです。検出器では、試料から散乱されたX線以外にも、試料周りの大気などのガス、粉末試料の場合には試料自体による余計な散乱光も検出するため、ノイズとなってしまいます。試料背面の湾曲結晶上では、余計に散乱されたX線は回折条件を満たさないためほとんど検出されず、目的のX線だけをクリアに取り出すことができるようになりました。

二結晶型波長分散XAFS装置はフォトンファクトリーARのビームラインNW2Aで2008年から利用されています。これまで見分けることのできなかった金属触媒の酸化還元反応の様子を捉えるなどの成果を輩出、XAFS利用研究の拡大に貢献したことも高く評価されました。

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図3 NW2Aに設置された二結晶型波長分散XAFS装置(上)とその模式図(下)


平成24年度KEK技術賞 受賞者

  • 吉本 伸一 氏(加速器研究施設加速器第三研究系技師)
    「KEKBの加速モードに起因する結合バンチ不安定を制御するフィードバックシステム」
  • 広瀬 恵理奈 氏(素粒子原子核研究所技師)
    「J-PARC一次ビームラインにおける即着脱冷却水コネクタの開発」
  • 丹羽 尉博 氏(物質構造科学研究所放射光科学第二研究系技師)
    「二結晶型波長分散XAFSシステムの開発」

◆用語解説

  • ※1 PDA検出器
    フォトダイオードアレイ(Photodiode Array)検出器。半導体ダイオードを利用した検出器で、光エネルギーを電気エネルギーに変換し、時間・光の波長・吸収度の3次元スペクトルを検出するもの。

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