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物構研共同利用実験S型課題所長ヒアリングを実施

物構研トピックス
2013年5月24日

5月10日、KEKつくばキャンパスにおいて、物構研の各施設でのS型課題について互いに意見交換を行うヒアリングが実施されました。 この会合は、プロジェクト研究型課題が設定されてから約20年を経た現在、それぞれの施設での現状や問題点について議論し、 物構研としてのS型課題の意義づけを明確にするために山田和芳物構研所長によって企画されたものです。大学共同利用と産業利用のビームタイム配分のあり方、 ビームタイム配分に柔軟性を持たせるための方策、複合量子ビームを使った課題の可能性などが広く議論されました。

物質構造科学研究所(物構研)の各施設は、共同利用機関として年間約4000人の研究者に利用されています。 共同利用実験課題は、放射光(低速陽電子を含む)・中性子・ミュオンの各共同利用実験審査委員会 (PAC) で審査され、 採択された課題に対してビームタイムが配分されます。共同利用実験課題のうち、プロジェクト型研究は「S(Special) 型課題」と呼ばれています。

放射光科学研究施設・フォトンファクトリーでは、1993年採択課題からS型課題が新設され、技術的困難度が高い実験や、高度な装置技術の開発を伴う実験に対して、優先的にビームタイムを配分し、 十分な成果が得られるように施設として支援を行ってきました。1997年からはS1型とS2型の2つのカテゴリーに分けられ、従来のS型をS2型とし、 ビームライン建設や大型実験装置整備を伴うプロジェクト研究を新たにS1型として新設しました。現在は低速陽電子利用課題を含めて10件のS型課題(すべてS2型)が実施されています。

中性子科学研究系では、つくばキャンパスにおいてパルス中性子科学研究施設(KENS)を運用していた1980年代から2006年まで、装置開発と建設を行うA型課題、先端的研究の推進、 装置高度化及びユーザー支援を行うB1課題を設定し、様々な大学研究者がKENSの運営に参画していました。J-PARCでも、同様に大学研究者に建設・運営の協力を得るために、 A型課題とB1課題を融合したプロジェクト研究として、S型課題が2009年に設定されました。J-PARCにおける8本のKEKビームライン毎にS型課題が実施されており、 優先的なビームタイム配分と予算配分が行われています。その他に検出器・デバイス開発を主旨とする2件の課題が実施されています(うち1件は2012年度末に終了)。

一方、ミュオン科学研究系でS型課題が導入されたのは2011年度からと比較的最近になってからで、主にフォトンファクトリーのS1型課題をひな形とし、 ビームライン・付帯設備などの改造を伴うような大型実験装置を用いた実験を想定した課題と位置づけられています。 課題審査は2段階に分かれており、現在8件のS型課題のうち1件のみが第二段審査を経て実施に移されていますが、実際にビームを用いた実験研究はまだこれからという段階です。

議論の結果は、今後の物構研のプロジェクト研究の推進に役立てられる予定です。


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