次世代放射光源として期待されているERL(エネルギー回収型ライナック)の実証器(コンパクトERL)にて、光陰極DC電子銃から発生した 電子ビームを、入射器超伝導加速空洞*で光速近く(5 MeV)まで加速することに成功しました。
電子発生および加速の概要
レーザー照射によってターゲットから出た電子は、390 kVの電圧により光速の82%まで加速される。その後、入射器超伝導加速空洞によりほぼ光速まで加速される。
ERLはこれまでの蓄積リング型放射光を凌駕する高輝度性、短パルス性をもつ放射光を生み出す次世代放射光源です。この実現のため、KEKは日本原子力研究開発機構、東京大学物性研究所、分子科学研究所(UVSOR)、広島大学、名古屋大学等と共同研究、技術開発を行ってきました。
本光陰極DC電子銃は、KEK、日本原子力研究開発機構、広島大学、名古屋大学により共同開発したもので、2009年に独自の多段セラミック管を用いた500 kV電圧印加に成功、 その後500 keVの大電流ビームの生成にも成功しました。 今回は、入射器超伝導加速空洞を導入し、光速までの加速に成功したものです。本成果は、ERL型次世代放射光源の実現を可能とする第一歩と位置付けられます。
コンパクトERLに組み込まれた電子銃にて、4月末に390 keVの電子ビームを引き出すことに成功、その後電子ビームを入射器超伝導加速空洞に導き、加速テストを実施してきました。 ビーム強度、位相、位置等の調整を経て、ほぼ光速である5 MeVまで加速することに成功し、原子力規制庁の指定登録機関である原子力安全技術センターの施設検査を5月27日に合格しました。 今後はエミッタンス(ビームの広がり)やビームの安定化の調整を本格的に開始します。そして夏のシャットダウンで周回部を建設し、秋からERL運転(ビームの周回運転)を目指します。