5月22日、23日の2日間、フォトンファクトリー (PF) にて、タンパク質X線溶液散乱の講習会が開催されました。
X線溶液散乱法は、溶液中のタンパク質などの分子の構造を得ることができる手法です。X線結晶構造解析のように、個々の原子の位置を正確に決めることはできませんが、溶液という生体中に近い状態で分子の形を観測できるという利点があり、 タンパク質分子が形を変えて運動する様子をリアルタイムで観測することもできます。このように、X線溶液散乱法は、X線結晶構造解析と組み合わせて用いることによって、タンパク質の構造と機能をより多角的に捉えることができるようになります。 また、生体中でかたちを変化させながら機能するタンパク質の本当の姿を捉えるためには、次世代放射光源の開発とともに、この2つの手法を組み合わせた新しい手法への発展も期待されています。
この講習会はX線溶液散乱法に初めて取り組もうとする研究者を対象に企画されたもので、1日目が講義、2日目が実習というスケジュールで行われました。 初日の講義は、X線溶液散乱法の原理や、良く用いられている解析法とそこから得られる情報、実際の測定例や解析の例など、基礎的なことから実践まで順を追って説明されました。 講義は約60名が受講し、会場のKEKつくばキャンパス4号館セミナーホールはほぼ満員という盛況でした。 受講者の多くはタンパク質X線結晶構造解析を専門とする研究者であり、X線溶液散乱法への関心の高さが伺えました。
2日目はPFのビームライン10Cにおいて、標準試料(卵白アルブミンなど)を用い、試料の調製から測定、データの解析やその解釈など、一連の手順を講師が説明しながら実演しました。 受講者はスクリーンに大写しになった解析用PCの画面を見ながら熱心にメモを取っていました。その後は、夕方から翌朝にかけて、あらかじめ申し込みがあった6グループについて、持ち込み試料のテスト測定が行われました。
終了後のアンケートでは、「基礎的なところから結晶構造解析との相関研究の実例まで幅広く分かりやすかった」「実際の実験・解析の流れが分かって大変参考になった」など、 多くの参加者から「期待以上に有意義だった」との評価が寄せられました。