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吉松公平氏、日本放射光学会奨励賞を受賞

物構研トピックス
2014年1月15日

吉松公平氏(東京工業大学 大学院理工学研究科)がフォトンファクトリーに設置した装置(レーザー分子線エピキタシ装置)の改良、および利用実験の成果が認められ、日本放射光学会奨励賞を受賞しました。 この賞は、日本放射光学会員である35歳未満の若手研究者を対象に、放射光科学に関する優れた研究成果に対して授与されるものです。

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左から:宮本幸治(広島大学放射光科学研究センター)氏、吉松公平氏、日本放射光学会長・村上洋一氏(KEK物構研教授)、長坂将成氏(自然科学研究機構 分子科学研究所)
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レーザー分子線エピタキシー(LMBE)装置と光電子分光装置からなる複合装置の概略図

受賞対象となった研究は「放射光光電子分光による強相関量子井戸状態の観測」です。当時在籍していた東京大学尾嶋研究室では、ビームラインと直結したレーザー分子線エピキタシ装置で試料を作製した後、真空中のまま光電子測定槽に試料を搬送し、放射光によってその電子状態を観測する一体型の装置を開発していました。
この装置をフォトンファクトリーのビームラインBL-28に移設し、絶縁層の基板上に伝導性のバナジウム酸ストロンチウム (SrVO3)の厚さを制御して積層させ、強相関電子を微小領域に閉じ込める量子井戸の作製に成功しました。そして、放射光光電子分光法により、積層枚数による電子のエネルギー状態を調べ、エネルギーが飛び飛びの値になる「量子化」されていることを観測しました。これは層の厚さを変えるだけで、電子のエネルギーを制御できるということを示し、また電子の分布(電子の広がり)を層の厚さによって選択することも可能となります。

この業績は、遷移金属酸化物薄膜を用いた強相関電子系の量子井戸に着目し、電子の閉じ込め、振る舞いの制御に初めて成功した例として、高く評価されました。

掲載論文:"Metallic Quantum Well States in Artificial Structures of Strongly Correlated Oxide"
Science 15 July 2011: 319-322. [DOI:10.1126/science.1205771]

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