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井手本 康氏、日本セラミックス協会 学術賞を受賞

物構研トピックス
2014年6月17日

(公財)日本セラミックス協会の授与する平成25年度の第68回日本セラミックス協会賞 学術賞に、長年KEKの中性子研究施設を利用研究している井手本 康氏(東京理科大学)が選出、表彰されました。 この賞はセラミックスの科学・技術に関する顕著な研究をなし、その業績が特に優秀な者に授与されるものです。

受賞対象となった研究は、「量子ビーム、熱力学測定を駆使した高機能性酸化物の特性発現機構の解明」です。
井手本氏は、アルゴンヌ国立研究所(IPNS)で中性子回折を始められて以降、中性子や放射光を用いた結晶構造解析をリチウムイオン電池等の材料開発に先駆的に取り入れてきました。 リチウムイオン電池の電極にはリチウム酸化物や黒鉛などのセラミックスが用いられています。これらの結晶・電子構造と充放電特性の関係を解明し、電極の高機能化につながる成果を上げています。 また中性子、放射光に加え、熱力学データを用い、構造と特性の関係を多角的に解明する手法を切り拓いてきました。 一方、実験結果と対比させるため、量子化学計算を取り入れ、特性向上の原理を示し、材料設計の指針を示しました

これらの研究は、J-PARCの前身であるKENS(KEK中性子研究施設、2006年3月に運転終了)、およびJ-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)を利用して行われてきました。 近年ではMLFにて、コインサイズの電極で電池を充放電させたときに生じる結晶構造の変化を世界で初めて捉えることに成功しています

このように、独創的な手法を用いて結晶構造、熱力学データと諸特性の関係を検討し材料設計の指針とするアプローチで多くの成果をあげてきたことが高く評価されました。


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