東北大学の高橋 隆 教授と佐藤 宇史(たかふみ)准教授がトムソン・ロイターのHighly Cited Researchers 2014の物理分野で選出、フォトンファクトリー(PF)の共同利用による論文が複数対象になりました。 Highly Cited Researchersとは、生命科学・医学・物理学・工学・社会科学等の21分野において世界で引用された文献の著者のうち、引用回数の最も多い研究者上位1%を調査し発表するものです。
高橋教授のグループは、角度分解光電子分光という手法を用いて超伝導体やグラフェンなどの物性を研究しています。近年では、スピントロニクスデバイスの新材料として注目されている「トポロジカル絶縁体」を中心に電子構造をその物性発現のしくみ解明に挑んでいます。 トポロジカル絶縁体は、物質内部は電気を通さない絶縁体でありながら、表面にだけ電気が流れる特殊な金属状態が現れる物質です。この物性発現の鍵である質量ゼロの電子の状態を解明し、制御することに成功しました。 これらの研究は、電荷とスピンを制御して利用する次世代の情報通信技術「スピントロニクス」につながる物性研究として、大きなインパクトを与えました。
ディラック錐状態における電子のエネルギー関係の模式図(左) と角度分解光電子分光で測定したエネルギー状態(右)
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これらの対象となった論文にはPFのビームラインBL-28Aにて行われた角度分解光電子分光による測定結果が数多く含まれており、PF発のデータが固体物理の研究に多くの影響を与えていると言えます。
結晶表面に高輝度紫外線を照射して、結晶外に放出される電子のエネルギーと運動量を同時に測定する実験手法。 この方法により、固体中の電子のエネルギーと運動量の関係(バンド分散)を決定でき、バンド分散から物質の示す超伝導や光学的性質などの様々な性質を説明できる。