新年、明けましておめでとうございます。
物質構造科学研究所(IMSS)は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の研究所として、放射光、中性子、ミュオン、ならびに低速陽電子などの量子ビームの先端的利用と複合的利用が可能な、物質・材料・生命科学の研究拠点として、国内外の基礎から応用にいたる広範な分野における研究者の自発的な研究と教育を推進し、人類と社会の継続的発展に向けて活動しています。
最先端研究が可能な研究拠点の基盤整備のため、KEK内ではIMSSと、加速器研究施設のスタッフがタッグを組み、さらには外部の大学などとの連携をベースとし、施設整備やアップデート、さらには新規装置の建設を行っています。たとえば、つくばキャンパスでは放射光施設PFにおいては新しい挿入光源の性能を最大に活かした高輝度ビームラインの整備が行なわれ、新しい実験がスタートしています。さらに低速陽電子施設ではビームの高強度化、高輝度化が実現し、最表面構造解析で興味深い研究成果が出ています。また東海キャンパスにあるJ-PARC物質・生命科学実験施設では、コミッショニングが終わった装置による先端的研究が進行中です。さらに中性子のスピン偏極を利用するビームラインや、世界初の超低速ミュオンを生成、利用するビームラインの建設が進められています。これらが完成すれば、世界でオンリーワンの実験と研究展開が期待されます。
IMSSは同時に多くの課題も抱えています。放射光施設PFの老朽化や、電気代高騰などによるユーザービームタイムの激減、ユーザーサポート充実のために必要なスタッフ数の慢性的な不足などなど。今年もこれらの課題解決に向けて、新しい提案とその実現に向けて最大限の努力を傾けていく所存です。
平成24年に所長に就任して以来のモットーは、「和して属さず、本質を語る」です。今年は未年。羊は群れで行動することから、チームワークを重んじる動物と言われます。IMSSが関わる大型施設は、チームワーク無しに運営することはできません。IMSS所員、加速器施設員、そしてユーザーやコミュニティの皆様と「和して」、しかしなれ合いになることなく(「属さず」)互いに切磋琢磨して、本当に重要なことは何かを常に考えつつ(「本質を語る」)物質・材料・生命科学の国際研究拠点を充実させていきたいと考えています。
今年も、IMSSをどうぞよろしくお願いいたします。
最後になりますが、本年も皆様のご健勝とご発展を祈念いたします。
物質構造科学研究所所長 山田 和芳