11月16日から20日の5日間にわたって、グルノーブルの放射光施設ESRFにおいて、African Light Source Conference and Workshop(アフリカ光源加速器会議およびワークショップ)の初めての会合が開催されました。フォトンファクトリーからは阿部仁准教授が参加しました。
2015年は国連が制定した国際光年。記念すべき年にスタートしたこの会議には、世界中から80名を超える科学者や、政府関係者らが集まりました。最初の2日間は、サイエンスセッションに充てられ、産業利用も含む広い分野における放射光利用研究が紹介されました。アフリカが直面しているさまざまな課題、例えば、マラリア、HIV、結核、エボラ出血熱などの病気に対する新薬開発、気候・環境問題、文化遺産に関する研究などのさまざまな分野に放射光が貢献できることが示されました。
しかし、現在、アフリカ大陸にはまだ放射光施設がありません。後半の3日間は、アフリカの放射光研究者コミュニティを強化し、将来的にはアフリカに放射光施設を建設するためのロードマップについての議論を行ないました。阿部准教授は、中東の放射光施設SESAMEの研究者のためのスクールについて紹介し、その他にも研究者受入れやレクチャーなど、アフリカの放射光利用研究者の人材育成にフォトンファクトリーが貢献できることを述べました。この提案には、参加者から非常に高い関心と期待が寄せられました。この3日間の議論は「グルノーブル決議」としてまとめられ、アフリカの放射光科学推進のための指標となります。
本会合の実行委員長のSimon Connell氏は、「提案したアフリカ放射光計画はまさにアフリカのサイエンスのルネッサンスになるでしょう」と延べ、運営委員のひとりであるSekazi Mtingwa氏は「ここ数年でアフリカ諸国が社会的・政治的・経済的に競争力のある国家となっていくためには、放射光施設が近くにあることが絶対に必要です」と話しました。開催地であるESRFのFrancesco Sette所長は、1988年に国家の垣根を越えてESRFが建設されたことに触れ、「当時よりいっそう、世界中の科学者が放射光を共有し、持続可能で平和な世界のために力を合わせてチャレンジする時代になりました。この会合がアフリカの放射光科学にとっての歴史的な一歩になることを確信しています」と結びました。