サンスターグループ ヘルス&ビューティーカンパニー(以下サンスター)は、椙山女学園大学の上甲恭平教授との共同研究により、加齢による毛髪のハリコシの低下が毛髪内の亜鉛と関係していることを解明し、亜鉛を毛髪に浸透させることで、衰えた髪質を回復する新しいヘアケア技術の開発に成功しました。毛髪内への亜鉛浸透、および毛髪内にある亜鉛の状態の確認には、フォトンファクトリーの蛍光X線分析、およびXAFS(ザフス、X線吸収微細構造解析)が用いられました。
加齢とともに低下する毛髪のハリやコシは、髪型が思い通りにまとまらないなどの悩みの種になっています。サンスターは毛髪内部から髪質改善し、しなやかでハリコシのある毛髪を実現するヘアケア技術の開発に取り組んでいます。ハリコシが低下する原因を毛髪内部の構造に着目し調べると、40代以降では毛髪内の亜鉛が減少すること、また上甲教授らの研究により羊毛では細胞膜複合体(CMC)に亜鉛が多く存在していることが報告されていました。これらの知見から、加齢による毛髪のハリコシ低下は毛髪のCMCに含まれる亜鉛の減少が原因と仮説をたて、ハリコシ改善の技術開発に着手しました。
実験では毛髪をギ酸に浸漬し、毛髪内の亜鉛を抽出、ハリコシを減少させたものを加齢モデル毛に使用しました。この加齢モデル毛をグルコン酸亜鉛水溶液(GlnZn水溶液)に1時間浸漬した後、乾燥、表面の亜鉛を洗浄して乾燥させたものを官能評価したところ、GlnZn水処理をしたものではハリコシの回復が見られ、曲げ剛性の測定でもGlnZn水処理をした毛髪では剛性の向上が確認されました。さらに毛髪内のどこに、どれくらいの量の亜鉛が浸透したかをフォトンファクトリーのビームラインBL-4Aにて蛍光X線分析を用いて調べました(図2)。その結果、浸漬させた亜鉛はもともと毛髪内で存在していた亜鉛と同様に分布していることが分かりました。加えて、GlnZn水処理をした毛髪内の亜鉛が、亜鉛化合物の状態ではなく、元々の毛髪と同等の構造で存在、アミノ酸と結合していることを、BL-12CおよびBL-9AのXAFSを用いて確かめました。
この結果は2014年10月にパリで開催された国際化粧品技術者会会議「IFSCC 2014 Congress」(IFSCC= The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists)および、繊維機械学会誌(Vol.61, No.4, 2015)にて発表されました。
今後、これらの知見を元に製品開発が進められる予定です。
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