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自発的に組み上がる二輪型分子ベアリング

物構研トピックス
2016年11月28日

東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の磯部寛之主任研究者の研究グループは、炭素と水素のみからなる分子を使い「二輪型分子ベアリング」が「自ら(自発的)」かつ「相手を選んで(自己選別的)」に組み上がることを見いだしました。

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二輪型分子ベアリングの組み上げ際に観測された自己選別・自発的組み上げ。二種類のリング状分子と車軸分子を同数混ぜると、同種二輪型分子ベアリングのみが組みあがり、異種混合二輪型分子ベアリングはできなかった。
(画像提供:東北大学 磯部寛之)

磯部教授らは、ナノサイズの分子が自発的に組みあがる仕組みを使って、新材料や分子機械の創製に取り組んでいます。これまでに、ナフタレンを利用した硬さの異なるベルト状分子や、カーボンナノチューブとフラーレンを利用した分子ベアリングなどの作成に成功しています。

今回、炭素のみで出来た球状分子(フラーレン)を2つ繋げたものを車軸のようにした分子(C120)を使い、ベアリングを組み上げると、「自己選別組み上げ」が起こることを発見しました。ベアリングの外側となるリング状分子には、炭素と水素から成る、二種類のC120H136を用意しました。そして、車軸分子とリング状分子をそれぞれ混ぜると、二輪型分子ベアリングができることを確認しました。次に、二種類のリング状分子を混合して車軸分子に混ぜました。すると予想に反して、異種混合の二輪型分子ベアリングは全くできませんでした。赤の輪状分子は赤の輪状分子と組となり、赤・青の輪状分子は赤・青の輪状分子と組となることで、同種二輪型分子ベアリングのみができあがったのです(図1)。実際の実験では、赤の輪状分子 と赤・青の輪状分子をそれぞれ 200,000,000,000,000,000 個(二十京個)ずつ、200,000,000,000,000,000 個(二十京個)の車軸分子と混ぜ、異種混合二輪型分子ベアリングが 0 個、同種二輪型分子ベアリングがそれぞれ 100,000,000,000,000,000 個(十京個)ずつできあがるという高精度な選別が実現されました。

これらの二輪型分子ベアリングの構造をKEKフォトンファクトリーNE3A、およびSPring-8の単結晶 X 線構造解析により解明しました。その結果、ベアリングのように内部の車軸分子が回転している可能性を見いだしました。

この成果は、高度・精緻な分子認識が、炭素と水素のみから成るファンデルワールス力のみで実現できることを示しました。またナノサイズの分子機械の組み上げにおいて、今回の様な自己選別法を活用することで、より複雑な機械構造の組み上げ、新機能の発見につながると期待されます。


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論文情報
掲載誌:Angewandte Chemie International Edition
"Self-sorting of two hydrocarbon receptors with one carbonaceous ligand" doi:10.1002/anie.201609444

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