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物構研の教育活動 CUPAL 放射光利用技術入門コース

物構研トピックス
2017年5月18日

2017年4月19日~21日に、フォトンファクトリー(PF)にて、Nanotech CUPAL N.I.P.コース「第5回 放射光利用技術入門コース」を開催しました。CUPAL とはキャリアアップアライアンス Career-up Allianceの略称で、N.I.P.コースは高度専門技術人材を育てることを目的としています。KEK 物質構造科学研究所では年2回、春と秋に短期型の入門コースを、入門コースを終えた方向けに必要に応じて中長期・分散型の上級コースを随時、開催しています。過去のテーマは、小角散乱・X線回折・XAFS・イメージングで、4テーマが一巡した今回は再びX線小角散乱装置の実習となりました。講師は物質構造科学研究所 放射光科学第二研究系 清水 伸隆 准教授、参加者は10名でした。

日程は全3日。初日は座学で、PFの概要説明から放射光の特長、放射光を利用した各種分析手法と事例が紹介され、2日目からは実験ホールに入り実習を行います。PFには3つのビームライン(BL)にX線小角散乱装置があり、それぞれ特色がありますが、今回の実習はBL-6Aで行いました。

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X線小角散乱装置には測定目的に応じて測定形態が2つあります。透過法小角散乱(SAXS)では文字通り、試料にX線を透過させるので試料内部の規則構造を知ることができます。また、斜入射小角散乱(GISAXS)では台に載せた平面試料にX線を浅い角度で入射させ、試料表面やその近傍の規則構造を解析することができます。両者では試料の設置方法も、試料に当てた後にX線が広がる角度も違うので、2つの手法の切り替えには、装置の大幅なセッティング変更が必要です。

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斜入射小角散乱のセッティング 試料位置を確認するためレーザー光を当てているところ
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透過法小角散乱のセッティング (BL-10Cにて)

実習では、SAXS・GISAXSそれぞれの手法に適したサンプルが用意され、測定と解析及びセッティング変更の実際を学習したあとに、受講者が持参したサンプルを使って測定と解析が行われました。

入門コース終了後、受講者の一人にお話を伺いました。 「現在関わっている装置の新規材料開発に役立てるため、現状の材料の分析をしたいと考え、NIMSの透過型電子顕微鏡実習やKEKの放射光利用技術入門コースを受講しました。 自分の分析したい試料は、X線小角散乱装置では知りたい情報が得られないことがわかり残念でしたが、試料の形そのものがX線散乱角度に影響を与えてしまうことを知り、今後の開発の参考になりました。 講義では初歩の初歩から知識を得ることができ、また受講者同士の交流も活発なので、研究のための視野を広げるのに非常に役に立ちます。」

入門コースを終了後、実際に装置を使って測定したいという希望者は、課題申請をして装置を利用することができます。さらに、装置のセットアップがされていれば自分で測定・解析を行うことができる人が、自分で装置を組めるようになるための実習が「放射光利用技術上級コース」です。自分の試料だけでなく多様なケースを経験するため、1ヶ月程度装置に張り付き、ユーザー対応も含めての実習となります。

次回の入門コースは、秋に講義と粉末X線回折の実習が予定されています。

関連情報:

Nanotech CUPAL ー事業の概要とKEKの取り組みー

PF小角散乱ビームライン