テルル(元素記号 Te, 原子番号 52)は毒性が高く、その放射性同位体は福島第一原発事故の際にも環境中に放出されました。 一方、テルルは太陽光発電などにも使われる先端産業に欠かせない希少な元素でもあります。
東京大学大学院理学系研究科の高橋嘉夫教授らのグループは、テルルの土壌中での化学状態を、 KEK放射光科学研究施設(PF)BL-15A1 での放射光による複合分析(μ-XRF-XAFS-XRD:マイクロビーム X線を用いた放射光蛍光 X線マッピング- X線吸収微細構造スペクトル- X線回折)などにより決定しました。 その結果、テルルは土壌中で酸化鉄粒子と共有結合した状態で強く吸着されることが分かりました。 これは、テルルが土壌中で水に溶けにくく、動きにくいことを意味します。 研究グループは、これまでほとんど知見がなかったテルルの分子レベルの局所構造情報を天然試料から直接得ることに成功しました。
PFのBL-15A1は、PFスタッフの 武市 泰男 助教、仁谷 浩明 助教、木村 正雄 教授らが設計・整備を担当する、複合分析を特徴としたビームラインです。 本研究は、PFのBL-15A1 の複合分析装置を駆使し、環境中での有害元素(テルル、セレン、ヒ素など)の挙動を明らかにしたもので、 これらの元素の環境挙動や濃集現象を予想する上でも、最先端の放射光分析が重要なツールとなることを示しています。
東京大学のプレスリリース:有害だがレアメタルでもあるテルルの環境挙動を支配する因子を解明 2017/06/06
論文情報
掲載誌:Environmental Science & Technology
タイトル:Tellurium Distribution and Speciation in Contaminated Soils from Abandoned Mine Tailings: Comparison with Selenium
フォトンファクトリー ビームラインの情報: BL-15A1