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外務省広報用映像にフォトンファクトリーの北村 未歩さんが出演

物構研トピックス
2017年12月20日

外務省が開催している国際女性会議 the World Assembly for Women (WAW!) の広報用映像に、物構研 放射光科学第一研究系の北村 未歩さんが出演しています。
映像のタイトルは "Promoting the active role of women in the fields of science" で、YouTube映像はこちらです。


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撮影は、9月につくばキャンパス4号館およびフォトンファクトリーBL-2Aで行われました。
外務省から委託を受けた英国CNNの取材班によるインタビューでは、北村さんの研究テーマのほか、女性が働きやすい社会が話題になりました。 北村さんは、自分が若い女性研究者の生き方のモデルの一つになれればと話していました。

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フォトンファクトリーBL-2A MUSASHI
レーザー分子線エピタキシー in situ 光電子分光複合装置の前で

北村さんの研究テーマ「界面磁性」

それ自体は強磁性をもたない酸化物同士をくっつけると、その界面が強磁性になるという非常に興味深い現象が現れます。 もちろん、この現象が現れるかどうかは酸化物の組み合わせによりますが、これを界面磁性と呼びます。 北村さんの研究テーマは、この界面磁性の起源を解明することです。
起源を調べるときには、くっつけると言ってもただ接しているだけではなく、「薄膜結晶を下地の基板の結晶面に揃えて成長させた」界面を用います。 このような界面の作製を可能にするのが、真空蒸着の一手法である「レーザー分子線エピタキシー法」です。
界面磁性の起源の解明のためには、原子レベルの精度で構造を制御した界面を作製し、元素毎に物質中の電子の状態やスピンの状態を明らかにすることが必要です。 北村さんは、「レーザー分子線エピタキシー法」を用いて酸化物を1層ずつ堆積しながら、「放射光」によって界面で起こる異種酸化物間の電子のやりとりを精密に評価するという独自の方法により、 やりとりした電子がどのように界面から広がっていくのかを明らかにすることに成功しました。
これまでの研究により、界面磁性の発現には、酸化物同士の界面で起こる両物質間の電子のやりとりと、やりとりした電子が物質によって空間的に閉じ込められたり広がったりすることが重要であることが分かりました。
今後の目標は、この研究で得られた知見に基づき適切な物質の選択や界面の形成を行うことで、界面での電子のやりとりを制御し、新規な界面磁性を設計・制御することです。

レーザー分子線エピタキシー法と放射光との融合

右上の写真の背景に写っているのが、フォトンファクトリーのビームラインMUSASHI(Multiple Undulator beamline for Spectroscopic Analysis on Surface and HeteroInterface, BL-2A) に常設された「レーザー分子線エピタキシー - in situ 光電子分光複合装置」です。 「レーザー分子線エピタキシー装置」では酸化物薄膜を作製し、「光電子分光装置」では光電子分光(XPS)や角度分解光電子分光(ARPES)、及び X線吸収分光(XAS)測定を行う事ができます。 ‘in situ’ はラテン語で、英語で書くと ‘in (the) site’、つまり「その場で」という意味です。
目的の異なる複数の真空チャンバーがゲートバルブというドアを通じて超高真空状態でつながっており、 作製した酸化物薄膜を大気に曝すことなく測定チャンバーまで搬送して電子状態の評価を行うことができます。

ビデオの中で、北村さんが回していたのが、 真空チャンバー間でサンプルをやりとりするためのサンプルをつかむ棒(トランスファーロッド)を動かしているノブでした。


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