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九州大学などの研究グループ、麻疹(はしか)ウイルスに対する感染阻害剤の作用メカニズムを解明

物構研トピックス
2018年2月26日

九州大学大学院医学研究院・ウイルス学分野の栁 雄介 教授と橋口 隆生 准教授を中心とする研究グループは、 理化学研究所、東京大学、米国ジョージア州立大学との国際共同研究により、麻疹ウイルスに対し感染阻害効果を示す阻害剤の作用メカニズムを解明しました。

麻疹ウイルスは高い感染力を持ち、一過性ではありますが強い免疫応答の低下を起こします。 また、低頻度ですが致死性の難病(亜急性硬化性全脳炎)を引き起こすことがあります。 予防のためのワクチンは定期接種となっていますが、発症後は対症療法が中心で特異的治療薬はありません。

「ウイルス膜融合タンパク質」とは、ウイルスがヒトの細胞に感染する際に必須の分子であり、神経細胞に感染する際にも極めて重要な役割を担っている分子です。 研究グループは、フォトンファクトリー BL-1AにおいてNative-SAD法*を利用することで、世界で初めて「麻疹ウイルス膜融合タンパク質」の構造を解明し、 さらに、ウイルス膜融合タンパク質と感染阻害剤が結合した状態を原子レベルの分解能で可視化することに成功しました。 また、ウイルス学的手法と構造生物学的手法・コンピュータ科学計算・生化学的手法を組み合わせることにより、 異なる2つの阻害剤が、ウイルス膜融合タンパク質の特定の領域に同じように作用して感染を阻害するメカニズムを解明しました。

*Native-SAD法:タンパク質や核酸の構成原子である硫黄やリンなどが1.6 Åよりも長い波長のX線では微弱ながらも有意な異常散乱シグナルを示すことを利用した位相決定手法。 硫黄やリンなどを重原子に置き換えた試料の準備を必要とせず、天然(Native)の結晶のみを用いて位相決定をすることが可能。


この成果により、麻疹ウイルス膜融合タンパク質上のどこを標的として治療薬を設計すると効果的にウイルス感染を抑制できるかが明らかとなりました。 麻疹ウイルスによる中枢神経感染メカニズムの解明に大きく貢献するだけでなく、今後、麻疹に対する抗ウイルス薬の開発へつながることが期待されます。

本研究成果は2月20日、米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences of USAに掲載されました。

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