信州大学 繊維学部 応用生物科学科の新井 亮一 准教授と自然科学研究機構 生命創成探求センターの小林 直也 博士研究員らの共同研究グループは、独自の人工設計タンパク質 (WA20) を鎖状連結するタンパク質ナノブロックを新たに設計開発し、組み合わせて合体させることにより直鎖状複合体や超分子ナノ構造複合体を創り出すことに成功しました。
タンパク質は、生体内において自己組織的に様々な複合体を形成し、複雑な生命現象を担っています。
研究グループは、望みの機能を実現できるタンパク質複合体を自在にデザインするため、独自の人工タンパク質の開発に取り組んでいます。
その「タンパク質ナノブロック戦略」では、まず小さなタンパク質を作り、それらを組み合わせて合体させ望みのタンパク質複合体を組み立てていく方法が採用されています。
物構研トピックスでも既にご紹介していますが、同研究グループは、基本となる小さなタンパク質WA20を開発、その構造を解明し(2012年発表)、ひとりでに組み上がる「タンパク質ナノブロック (Protein Nanobuilding Block: PN-Block)」を設計しました(2015年発表)。それぞれの立体構造の解明には、フォトンファクトリーでのX線結晶構造解析法およびX線小角散乱法が利用されています。
今回の研究では、さらに進んで、WA20を直列に連結したタンパク質ナノブロック extender PN-Block (ePN-Block) を開発し、また、異なるナノブロック stopper PN-Block (sPN-Block)と組み合わせることで、異種複合体 (esPN-Block)を構築しました。 また、esPN-Blockに金属イオンを添加することにより、自己組織的に超分子ナノ構造複合体を形成させることにも成功しました。
今回の研究における構造解析のための小角X線散乱実験にもフォトンファクトリー BL-10C が活用されています。
本研究のタンパク質ナノブロック戦略は今後、日本発祥の先進的分子技術の一つとして、ナノテクノロジーや合成生物学のさらなる発展に貢献すると期待されます。
この研究成果は、米国化学会発行の学術雑誌 ACS Synthetic Biology 5月18日発行号に掲載されました。
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