12月のサイエンスカフェは、1月につくばで開催の日本放射光学会 市民公開講座のプレ企画です。つくば在勤の研究者が週替わりで出演しました。
市民公開講座では放射光を作る研究者に登壇いただくことが叶わなかったということで、12/15には光源加速器の研究者 島田 美帆 さんに、
12/22には、市民公開講座のパネリストである物質・材料研究機構(NIMS)の永村 直佳 さんに出演いただきました。
市民公開講座の企画担当で、当日の司会者でもある宇佐美さんが、放射光科学の魅力や、市民公開講座の見どころについて紹介しました。
初めに放射光とは何かについて説明があり、放射光の歴史にも触れました。今年、放射光は70歳、KEKのフォトンファクトリー(PF)は35歳なのだそうです。
また、PFの放射光が、物質科学だけでなく、生物学や環境科学・地球科学など、さまざまな研究に役立てられていることを解説しました。
宇佐美さん自身による「放射線照射による生物への影響発現についての研究」の紹介もありました。
後半には、市民公開講座に登壇する女性研究者ひとりひとりについて紹介がありました。
このサイエンスカフェでは加速器を使う研究者からの話題提供が多いのですが、加速器を「作る」研究者の登場です。
リピーターの多いKEKサイエンスカフェですが、12/9付け朝日新聞茨城版に写真付き記事が載った直後とあって、初めて来たという方も見受けられました。
島田さんは、放射光の出るしくみや、加速器のスペックについて説明。いい加速器と呼ばれるためにはエミッタンスを小さくしなければならないと、グラフや数式などを使って解説しました。
そのために使う電磁石についても説明がありました。
また、フォトンファクトリーのような蓄積リング型の放射光施設と、X線自由電子レーザー(XFEL)やエネルギー回収型線形加速器(ERL)との比較を行いました。
最後に、島田さんが研究に関わっている国際リニアコライダー(ILC)とコンパクトERLの紹介があり、ILCの加速器から放射光を取り出すアイディアや、
ERLの実証機として既にKEKつくばキャンパスで稼働しているコンパクトERLの紹介がありました。
途中で島田さんが、電磁波、放射光シミュレーター「波動くん」を紹介すると、会場の視線はスクリーンに釘づけに。Shintake Radiation のソフトを無料でダウンロードできるページはこちらです。
2017年最後のサイエンスカフェは、学会で知り合ったというなかよし二人組が登場。
初めに、酒巻さんから、研究者になった経緯と、現在はフォトンファクトリーの放射光を使い磁性薄膜の界面における磁気的な性質を調べています、と自己紹介がありました。
「HDDなどのデバイス応用を視野に入れて研究を進めています」と話すと、中学生から「もしそれが実現したらものすごい情報量ですね」とコメントがありました。
永村さんからは、放射光との運命的な出会いと、現在の放射光なしではできない研究についてお話がありました。
永村さんたちが開発した「走査型3次元光電子顕微鏡」は、放射光を使って、良好な空間分解能を持ちつつ、デバイスを動作させながら測定ができる装置です。
高い精度を実現するために、装置や実験環境にあの手この手で工夫を重ね、デバイスの性質を大きく左右するナノスケールの「キワ」を調べるというお話でした。