多摩六都科学館は、東京都の小平市・東村山市・清瀬市・東久留米市・西東京市の5市で運営されている科学館で、西東京市にあります。 KEKとは広報の連携協定が結ばれており、KEKの職員が講師を務めるイベントも多数開催されています。
2月2日、物構研のオリジナル実験プログラム「チョコレイト・サイエンス~物理で美味しく~」を開催しました。 午前・午後の2回で定員は46人でしたが、インフルエンザ流行のため直前のキャンセルが相次ぎ、37人の参加となりました。
実験では、チョコレートを湯せんで融かしたあと、自然に温度を下げて固めたチョコレート(自然冷却)と、温度制御をしたチョコレート(テンパリング)の2種を作りました。
調理用の温度計でチョコレートの温度を測りながらの作業ですが、温度ムラができないように混ぜ続けるのがポイントです。
初対面の人同士でグループになって作業をしますが、ビーカーを支える人、ゴムべらで混ぜる人、温度計を持つ人、温度を読む人、みんなで一つのチョコレートを作りあげていきます。
「テンパリングをしたチョコレートと、自然冷却のチョコレートでは混ぜているときの手ごたえが違った」
という感想も聞かれました。
プロは温度計を使わずに手に感じる抵抗やツヤを見ることで作業のタイミングを判断するのだそうですよ。
作業のあとは、自然冷却したものとテンパリングしたものはどう違うのか、チョコレートの中では何が起きているのかについて、宇佐美 徳子 講師から説明を聞きました。
その後、実際に2つの方法で作ったチョコレートを比較します。
手に持ったときの感触や、型から外したときの様子、割れ方、そしてもちろん食感や味まで、違いを観察しながらの試食です。
「こっちは断面がぼさぼさしているけど、こっちはパキッと割れた」
「甘さが違う。同じ材料なのになんで?」
など、それぞれに違いを感じ取っていました。
今回は、型に入れたあと、冷蔵庫で冷やしたもの、常温に置いたものの比較も行いました。
実験のまとめとして、2種のチョコレートの違いをチャート上の点に表しました。 テンパリングは気を遣う作業ですが、同じ材料から全く違うチョコレートができあがるのを体験できたと思います。 参加者からは「チョコレートは『結晶である』というのがとてもよく理解できました」という感想も聞かれました。
この実験プログラムは、物構研のフォトンファクトリーで放射光を使った実験を続ける広島大学 生物生産学部の上野 聡 教授のご協力で作成されたもので、 実際に放射光を当てながらテンパリングの条件によってチョコレートがどう変化するかを観測した結果に基づいています。 フォトンファクトリーでは、チョコレート以外にも身近な物質が研究の対象となっています。
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