東京大学大学院医学系研究科の廣川信隆特任教授と理化学研究所の吉川武男チームリーダーらの共同研究グループは、カルボニルストレス(酸化ストレスの帰結の一つ)が引き起こす統合失調症の発症メカニズムを、原因となるタンパク質のX線結晶構造解析などから解明しました。
統合失調症患者のおよそ2割において酸化ストレスの一種であるカルボニルストレスが亢進していることが近年報告されています。共同研究グループは、カルボニルストレスを伴う統合失調症の患者で変異が確認されたGLO1遺伝子に着目し、この遺伝子を破壊したiPS細胞を作成しました。このiPS細胞の中でカルボニル化修飾を受けるタンパク質CRMP2を同定し、カルボニル化を受けたCRMP2の構造をフォトンファクトリーのBL-5A, 17AやSPring-8において放射光X線結晶構造解析により解析したところ、カルボニル化CRMP2タンパク質が多量体化して細胞骨格の制御機能を失うことが疾患病態の基盤にある可能性を初めて示しました。この成果は、統合失調症における治療薬や予防法の開発のための基盤となります。
詳しくは… 東京大学のプレスリリース:「酸化ストレスによる統合失調症の発症メカニズムを解明―カルボニルストレスを伴う統合失調症におけるタンパク質の機能異常を発見―」(2019.10.7)
AMED(日本医療研究会初寄港)のプレスリリース:「酸化ストレスによる統合失調症の発症メカニズムを解明―カルボニルストレスを伴う統合失調症におけるタンパク質の機能異常を発見―」(2019.10.7)
論文情報:Manabu Toyoshima, Xuguang Jiang, Tadayuki Ogawa, Tetsuo Ohnishi, Shogo Yoshihara, Shabeesh Balan, Takeo Yoshikawa, Nobutaka Hirokawa
“Enhanced carbonyl stress induces irreversible multimerization of CRMP2 in schizophrenia pathogenesis”,
Life Science Alliance, 2, e201900478 (2019)