九州大学 先導物質化学研究所の高原 淳(たかはら あつし)教授が、2020年度の日本中性子科学会 学会賞を受賞しました。受賞テーマは「中性子反射率測定によるソフト界面の構造評価」です。日本中性子科学会の学会賞は、中性子科学の進歩発展に寄与しその業績が顕著な者に対して授与されるものです。
高原教授は長年にわたり中性子反射率計を使った高分子材料の表面構造と物性に関する研究に従事し多大な成果を挙げてきました。2000年から本格化したKEK中性子散乱実験施設KENSにおける水平型反射率測定装置ARISAの建設では装置設計から参画し、立ち上げ当初から測定に利用するだけでなく試料環境整備、研究成果の発信に大きく貢献しました。さらに2008年に供用を開始したJ-PARC MLFでは初代水平型反射率測定装置ARISA-IIを経て、JST/ERATO高原ソフト界面プロジェクトの一環としてJ-PARC MLF BL16のSOFIA建設を推進し、装置建設ならびに研究推進において主導的な役割を果たしました。
高原教授は、上記の中性子反射率装置を用いて従来手法では困難であった有機・高分子材料の埋もれた界面のナノ構造の評価を行い、高い生体適合性を有する高分子ブラシについて電荷の効果を明らかにするなど、数々の先導的な研究を行ってきました。これらの成果は学問的に高く評価されているのみならず、日本における中性子反射率法の普及に大きく貢献しており、産業界への広がりにおいても重要な役割を果たされています。
また、KEK物構研の中性子共同利用実験審査委員会委員を務められるなど、高原教授には物構研の中性子実験施設の運営においても多大な貢献をいただいています。
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