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KEK

画像処理屋がKEKで単粒子解析をやるということ

物構研トピックス
2020年12月14日
解析結果を説明する 守屋 俊夫 特任准教授

解析ってコンピュータがやるんでしょ、と思う人は少なくないだろう。
しかし構造生物学研究センターで画像解析を研究する守屋 俊夫氏は「単粒子解析はやる人によって質が変わる」と言う。「注意して見てデータを扱う人がやらないと新しい知見は生まれないし、いいアルゴリズムはできない」というわけだ。たくさんのデータに触れ、こういう傾向があるからこういうアルゴリズムができると発想する、工夫する。それが結果に直結することがある。

例えば、粒子の切り出しのときに問題となる2つのパラメータがある。切り出しの枠の大きさと、粒子範囲(粒子の中心から半径いくらのところまでを粒子、その外は背景と指定するか)の大きさだ。切り出しの枠については大きくした方がいい、でも、大きくしすぎると回転と位置合わせのときに合わせにくいし処理量が増えて無駄になる、と言われていた。一方、粒子範囲についてはこれまで議論はなく、多くの人が見た目の粒子ぎりぎりのところを境界としていた。
最近、守屋氏はそれらについて最適化を試みた。電子顕微鏡の理論を考え、粒子範囲を切り出しの枠ぎりぎりまで大きくしてみたのだ。すると、それだけで、一見して分かるほど分解能がよくなった。
実はTEM撮影の過程で目に見える粒子の像の外にも情報が滲みだしているのだが、その情報を粒子範囲の設定で切り捨ててしまっていたのだ。ソフトウェア開発研究者も手法論者も認識していなかった「切り出しの枠をいくら大きくしても粒子範囲のパラメータがその効果を消していた」という事実が初めて判明したのだった。

様々な環境に身を置いてきた守屋氏だが、KEKは自分に合ったいい職場だと思うと語る。その理由は所属する物構研SBRCのメンバーの考え方だという。
「大学共同利用機関としてユーザーをサポートしてあげたい、というのは大学や研究所ではなかなか見られない考え方。みんなのためにやると自分の成果にならないのにもかかわらず、率先して頑張っているのがすごいな、と」
守屋氏はソフトウェア開発はみんなのための仕事になると考えている。そのような形での貢献を認めてくれる研究仲間と共に活躍していきたい、と目を輝かせた。

KEKは装置も計算機システムも人材も余裕があるとは決して言えないが、工夫次第で分解能が上がる余地はまだまだある。この記事を準備する間にも最高分解能が更新されたという知らせがあったように。


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