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電気通信大学の大学院生がJ-PARC MLFでミュオン実験を体験しました

物構研トピックス
2021年7月27日

電気通信大学 大学院 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 博士前期課程1年の吉田 実生(よしだ みお)さんが、J-PARC MLF ミュオン科学実験施設で7/1から7/14の2週に渡るインターンシップに臨みました。ミュオン科学実験施設には、今年4月のμSR実験(フッ化物イオン電池のイオン伝導性に関する研究)に次ぐ2回目の来訪で、物構研ミュオン科学研究系独自の実験支援インターンシップ*を利用しました。

*実験支援インターンシップ: 物構研ミュオン科学研究系が、大学共同利用の精神を活かし、J-PARC MLF ミュオン科学実験施設での共同利用実験の支援を通してミュオン実験のスキルを学ぶインターンシップ(大学院生)の受け入れを行うシステム。

同時期に行われていた「はやぶさ2」の実験を間近に見て、常に「どうすれば今よりも良い実験になるか」ということを考えて実験することが大切だと感じたという吉田さん
ゲルマニウム半導体検出器の測定結果を説明する吉田さん
ゲルマニウム半導体検出器

吉田さんは大学で57Feの状態をメスバウアー分光法*で調べ、特異的に黒い稲村ヶ崎海岸の砂やビスマス置換イットリウム鉄ガーネットの磁気光学効果を研究しています。インターンシップではゲルマニウム半導体検出器(Ge検出器)を扱えるようになることを目標に、標準線源であるユウロピウム(152Eu)から放出されるγ(ガンマ)線・X線を測定、解析しました。

*メスバウアー分光法: γ線のドップラー効果と原子核のγ線吸収現象を利用することにより、試料中の原子の価数や原子核の周りの電気的・磁気的な状態を知ることができる分析法。 線源である57Co原子核は軌道電子を捕獲してβ崩壊し57Feに核変換する。このときに発生するガンマ線のエネルギーを、ドップラー効果により微小に変化させ試料に照射する。試料中にも57Fe原子核が存在するとこのγ線を吸収するが、このときに吸収できるγ線のエネルギーはイオン価や磁気などの状態により異なる。線源と試料の相対速度と透過率を測ることにより吸収γ線のエネルギーを調べ、試料中の57Feの状態を知ることができる。

博士後期課程に進学するか就職するかで悩んでいるという吉田さんは、「視野を広げ自分の将来に対するビジョンを明確にするために、まずは研究者が働くJ-PARC MLFに来ました」と実習の目的を語ってくれました。MLFでは、研究者の道を志したときの将来像が何か見えるのではないかと思い実験を行っていたそうです。研究者の仕事ぶりを見て「皆さんミュオンが大好きなんだ」と感じたと言います。

吉田さんが所属する研究室にはGe検出器がないため、今回のインターンシップでは毎日新しいことを学ぶことになりました。実習で苦労したことについて「前に教えてもらって吸収したつもりでも、アウトプットがうまく出来ないことが何回もあった」と振り返ります。でも「実習が楽しい。それが(やる気の)源になっている」と笑顔を見せました。

吉田さんの今後の目標は、自分の専門であるメスバウアー分光法だけでなく、J-PARCや千葉県にある量子科学技術研究開発機構(QST)の重粒子加速器(HIMAC)を使い、幅広い分野で活躍できるようになること。「4月のμSR実験や今回のGe検出器での実験では、今までやったことのない手法に挑戦しました。それに対していろいろな課題が出てきました。今回の実習はそれらの課題にどうやって対処していくか、という姿勢を少し学べました」と実習を振り返りました。

インターンシップを指導した物構研ミュオン科学研究系の竹下 聡史 助教は実習中の吉田さんについて「何事にも熱心で一生懸命な姿勢がとても印象的でした。特に今回Ge検出器を扱うのは初めてとのことでしたが、使い方を教わった後に、自分で色々と手を動かして復習しているのに感心しました」と振り返り、「様々な技術や知識を身に付け、今後もぜひ研究の面白さを追求してもらえればと思います」とエールを送りました。


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