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物構研ユーザーの有馬孝尚教授が2021年度仁科記念賞を受賞

物構研トピックス
2022年1月 6日

東京大学大学院新領域創成科学研究科の有馬孝尚教授(兼 理化学研究所 創発物性科学研究センター・強相関量子構造研究チームリーダー)が、2021年度(第67回)仁科記念賞を受賞されました。仁科記念賞は、故仁科芳雄博士の功績を記念して、わが国で原子物理学とその応用に関して優れた研究業績をあげた研究者を表彰するために、1955年に創設された賞です。

受賞業績は「スピン誘起マルチフェロイクスの発見と開拓」で、東京大学大学院新領域創成科学研究科の木村剛教授との共同受賞となりました。マルチフェロイクスとは、例えば1つの物質中に強磁性体と強誘電体の両方の性質が共存しているような状態を指し、磁場によって電気的性質を制御したり、逆に電場で磁化を誘発することが可能になることから、記憶素子やスイッチなどへの応用が期待されています。両氏は、2003年にTbMnO3というマルチフェロイクス物質を発見し、これを契機としてマルチフェロイクスが急速に注目されるようになりました。その後、有馬教授は、放射光X線や中性子を複合的に用いて結晶構造や磁気構造を解析し、マルチフェロイクスがどのようなしくみで発現するか実証を進め、マルチフェロイクスの基礎学理の発展に大きく貢献したことが評価されての受賞となりました。また、複数の量子ビームを複合的に用いるアプローチは多くの物質科学研究者に影響を与え、物構研においても量子ビーム連携研究センター (CIQuS)の設立につながっています。

有馬教授は、CIQuSの連携メンバーや物構研運営会議のメンバーなど、物構研の研究者との連携や、運営にも多大な貢献をされています。11月に行われたKEK 50周年記念シンポジウムでは、物構研のユーザーから見た物質構造科学の今後に向けての貴重な提言を含めたご講演をいただきました。

この受賞に際して、有馬教授から「今回の受賞の最大の要因となった研究には、フォトンファクトリーでの成果が非常に重要な役目を果たしていました」とのコメントをいただいています。

2021年11月につくばキャンパスで開催されたKEK 50周年記念式典(スクリーンは配信画像)

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