第6回中性子・ミュオンスクールが2022年12月12日(月)〜16日(金)に開催されました。ハイブリッドで実施した10本のレクチャーには20か国から約170人もの登録がありました。そして3年ぶりにオンサイト開催となった実習には、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)の他、同じ敷地内にある日本原子力研究開発機構の研究用原子炉 Japan Research Reactor-3(JRR-3)でもおこなわれ、国内外から18人が参加しました。実習参加者からは「非常に勉強になり面白かった」という感想が寄せられました。
中性子・ミュオンスクールは大学院生、ポスドク、若手研究者を対象とし、毎年開催されている国際スクールです。しかしながらコロナ禍の2020年は中止になり、2021年はすべてのプログラムがオンラインでの開催となりました。今年は国内外から参加者を募り、MLFの5本の中性子ビームラインと2本のミュオンビームライン、JRR-3の1本の中性子ビームラインでオンサイトの実習をおこなうことができました。
参加者は各ビームラインスタッフの手ほどきのもと、試料を準備してビームラインへ設置し、ビームを当てて得たデータを解析し、実験結果を発表資料にまとめ、最終日に発表しました。すべてのビームラインの発表後、参加者、スタッフで投票し、プレゼンテーション賞を選出しました。
プレゼンテーション賞
1位:MLF BL01 四季(中性子)「Observations of phonons by inelastic neutron scattering」
2位:MLF BL14 AMATERAS(中性子)「Studying Spin Dynamics using Inelastic Neutron Scattering on BL14 - AMATERAS」
3位:MLF S1(ミュオン)「Hands-on Training」
プレゼンテーション賞で1位となったBL01のメンバーは、京都大学の特定助教で高精度原子間ポテンシャルの高速計算や材料科学への応用を研究している西山隆之さんと、東京大学の大学院生で、MLF BL11 PLANETで高圧下粉末中性子回折実験をおこなっている小林大輝さんです。二人は中性子非弾性散乱実験で銅単結晶のフォノン(結晶格子の振動)の分散関係を明らかにしました。
西山さんは「レクチャーで伊藤先生がフォノンの分散関係のお話をされました。実際に測定したデータを理論と比較することで、目に見えない原子間相互作用を想像することができて面白かったです」、小林さんは「中性子は使う人の工夫でいろいろなデータが取れます。これまでやったことのない非弾性散乱実験ができて面白かったです」とスクールの面白さを振り返りました。
校長を務めた日本中性子科学会の加倉井和久会長は「みなさんの熱心さ、全てのグループのプレゼンテーションの高いレベルに感心しました。スクール期間中に同世代の多くの科学者と知り合い、育まれた友情は、あなたの人生の宝物になることでしょう。このスクールでの経験がみなさんの将来のキャリアに生かされることを切望します」とエールを送りました。
最後に実行委員長を勤めた日本原子力研究開発機構の鬼柳亮嗣研究副主幹が、「スクールはスタートポイントです。実際にMLFやJRR-3を大いに使ってください!」と挨拶してスクールは終了しました。