総合研究大学院大学(総研大)高エネルギー加速器科学研究科・物質構造科学専攻の三木 宏美さんが、高エネルギー加速器科学研究科長賞を受賞しました。3月24日に葉山キャンパスで行われた学位記授与式にて、高エネルギー加速器科学研究科長の本田 融(ほんだ・とおる)教授より賞状が授与されました。
三木さんの学位論文タイトルは、「食形態が顎関節に与える影響のX線位相イメージングによる評価」です。歯科医師としてのキャリアを持つ三木さんは、訪問診療に携わってきた経験から、介護食などの食形態と摂食嚥下機能に関して、放射光X線を用いたイメージングにより定量的に評価することを着想したそうです。三木さんが用いた「放射光X線位相コントラストイメージング」という手法は、いわゆる「レントゲン写真」とは異なる原理で、わずかな密度の違いを見分ける手法です。三木さんはこの方法を駆使し、最適化を行って、非常に薄く描出が困難であった顎関節部の関節軟骨や、介護食品の微細な構造などの描出に成功しました。そのうえで、異なった形態の食品を継続して摂取したラットの顎関節の画像を取得し評価を行うことで、「やわらかい」食品が顎関節に与える影響について定量的に明らかにすることに成功しました。三木さんのアプローチは、食品科学や基礎医学研究における応用に向けても有望で、今後の進展が期待されることが高く評価されました。
「このたびは高エネルギー研究科長賞という素晴らしい賞を頂き、大変光栄に思っております。博士課程で私が行った研究は、歯学部の学生として学んできた歯科医学の知識と、歯科医師として臨床の現場で得た経験、それから総研大で新たに知識を得て行った放射光実験全てが重ね合わさり構成されています。一見関係なさそうなことであっても、見方を少し変えたり別の手法と組み合わせたりすることで、新たな研究の可能性を広げることができるということを深く学ぶことができた総研大での5年間でした。主任指導教員の平野先生をはじめとして、研究を支えてくださった多くの方々に心よりお礼申し上げます。」