一関工業高等専門学校の藤澤 萌(ふじさわ もえ)さんが、8月19日から9月13日までKEKの高専インターンシップ(体験入学)※に参加しました。インターンシップ先としてKEKを選んだきっかけは、4月に見学に来たことでした。KEKの研究者や施設の雰囲気に触れ、研究の現場で学びたいと考え、参加を決意しました。今回のインターンシップで、将来の進学や研究者になるための進路について理解を深めたいという目的もあり、KEKでの学びを通じて総研大への進学や研究環境について具体的なイメージを持つことができたそうです。
4週間にわたるインターンシップで、藤澤さんは「米粉パンの構造」をテーマに研究に取り組みました。1週目は、米粉パンの構造についてまとめた英語論文を読み、テーマについての理解を深めました。2週目からは、三木 宏美(みき ひろみ)特別助教の指導のもと、本格的な実験がスタートしました。4種類の米粉でパン生地を作り、小角X線散乱法(SAXS)や広角X線散乱法(WAXS)で生地を加熱しながらナノ構造の違いを測定し、科学的な視点でデータを収集しました。
小麦粉のパンに塩を入れるのは、グルテンを安定化させるためといわれています。2週目の実験結果から、藤澤さんは「米粉パンにも塩を入れる必要があるのか?」という疑問を持ちました。そこで3週目には、塩の量がゼロ、規定量の2分の1、規定量、規定量の2倍の4種類のパンを比較し、パンの膨らみ方や風味がどのように変化するかを、物構研の研究者やスタッフに試食してもらい分析しました。その結果、塩の量によってパンの食感が変わり、甘みが引き立つことが分かりました。最後の4週目には、実験データをまとめ、発表しました。
インターンシップで最も印象に残ったのは、KEKの温かい雰囲気と居心地の良さです。パンを配りながら研究者やスタッフと自然に交流できました。ご近所さんのような距離感が心地よく、高専の雰囲気にも似ていると感じました。また、SAXSやWAXSなど、これまで使ったことのない最先端の実験装置に触れる経験も刺激的で、最先端の装置を使って自分の手で実験する楽しさを味わえました。
1カ月間のインターンシップは、始める前は長く感じたものの、あっという間に過ぎていきました。普段触れることのない食品関連のテーマを科学的に探究できたこと、研究者たちとのディスカッションの中で自分の考えを整理する機会が得られたことが、とても新鮮でした。
KEKのインターンシップは「高専生にとてもなじみやすい環境」と藤澤さんは強く勧めます。研究者と近い距離で学び、最先端の実験装置に触れながら、実践的な学びを深めることができます。興味のある学生は、ぜひKEKの門をたたいてみてください!